コロナウイルスの影響が出始めた時、アリス・ボールディノンさんは留学生としてメルボルンで2カ月を過ごしたところでした。ホスピタリティーの仕事を2つ掛け持ち生活を支えていましたが、ロックダウンが導入された3月には仕事を失いました。
「レストランの仕事を失い、アイスクリーム屋の仕事も勤務時間が減らされました。とても大変でした。メルボルンの生活費が高いのは知っているでしょう」とボールディノンさんは語ります。
ボールディノンさんはメルボルンにいる親戚の援助を受けて生活していました。

Alice Bordignon with her partner Source: Supplied
「そしてイタリアから私のパートナーが、一緒に住むためにやってきました。彼は仕事を見つけることができていません。私の学費、家賃、食費をまかなうには、(週)10~15時間の仕事では足りません。私たちはイタリアにある貯金でなんとか暮らしています」
しかし、オーストラリアにいる一時滞在ビザ保持者の多くは、ボールディノンさんのように親戚から支援を受けられたり、いざという時の貯金があるわけではありません。
マレーシア人の亡命希望者マイアンさん(仮名)は、プロテクションビザの申請中です。現在はブリッジングビザで滞在し、ビザの申請結果を待っています。昨年12月からずっと仕事を探しています。
「仕事探しを続けていますが、ブリッジングビザでは厳しいです。みな、探しているのは永住権か市民権保持者だと言います。私が長期間オーストラリアに滞在できないのではないかと懸念しています」と、マイアンさんは語ります。
無職のマイアンさんは、ほかの5人の女性と1つの部屋をシェアしています。日々の暮らしは食料の無料配布などに頼っています。
「ホームレスになる寸前で、おかしくなりそうです。女性向けの緊急滞在施設に申し込んでいますが、順番待ちです。2カ月待っていたところ、私は入居できないと言われました。私がオーストラリアのレジデントでなく、センターリンク(からの支援金)を受けていないことが理由です」。
マイアンさんは、ビザの発給判断を待っている人向けの政府の生活支援プログラム SRSS(Status Resolution Support Services)に申請する資格がありますが、最近行われた予算の削減により、SRSS の支援対象は縮小されています。
非営利の支援団体セトルメント・サービシズ・インターナショナル(SSI)のバイオレット・ルーメリオーティス最高経営責任者(CEO)は、「ここ数年間で、多くのクライアントが(SRSS)プログラムから閉め出されました。政策が変わり、仕事の有無にかかわらず、働くことのできる人はプログラムを利用することができなくなったのです」と説明します。
ルーメリオーティスCEOによると、コロナウイルスの影響が出始めてから、仕事を失った数百人がSSIに支援を求めてきました。これらの人の多くが学生ビザの保持者で、ほかにも政府の支援対象となっていない一時滞在ビザ保持者がいました。
セトルメントサービスのプロバイダーからのサポートがなければ、オーストラリアの移民そして難民コミュニティーの一部が忘れ去られ、支援サービスが受けられなくなってしまうという甚大なリスクがあります
留学生のアリス・ボールディノンさんは、政府は支援対象を留学生に拡大するべきだと語ります。
「私たちは(オーストラリア)経済に貢献しています。学費に数万オーストラリアドルを支払い、税金を払い、ほかの人の雇用を作っています。これは認識されるべきです。この困難なときには、オーストラリア人が受け取っているのと同じ支援を私たちにも与えて欲しいと思います」。
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州別、COVID-19危機下での留学生支援
今年3月、SSIなどのセトルメントサービスプロバイダーや業界団体など4団体がスコット・モリソン首相に対して書簡を送り、業界への支援を求めています。
ルーメリオーティスCEOはSBS Radioに対し、「連邦政府に何度も書簡を送りましたが、全く取り上げてもらえませんでした。ですから、政府から何も支援は得られないのだと思っています」と語りました。
連邦政府内務省は、同省はコロナウイルスのパンデミックが始まってから、セトルメントサービスプロバイダーと協力して、人道入国者(humanitarian entrants)に対して必要な支援の提供に取り組んでいるとしています。

Violet Roumeliotis, Chief Execitive Officer, Settlement Services International. Source: Facebook / SSI
内務省の報道官はSBS Rad
ioに対し、「内務省は今後も、人道入国者やほかの移民に対し、オーストラリアでの最初の5年間について、英語教育や心身の健康維持などを含めた生活に必要な支援を提供することに、資金を拠出します」と述べています。
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苦境の留学生を自宅に、格安ホームステイ始まる
この報道官によると連邦政府は今回、一時滞在ビザ保持者向け支援として、州やテリトリーからの支援とは別に、オーストラリア赤十字に対して700万オーストラリアドルを振り分けています。
ルーメリオーティスCEOは、各州・テリトリーが一時滞在ビザ保持者向けの支援を提供していることを歓迎する一方、支援の内容が「長期的で構造的な問題に対する極めて短期間の解決策でしかない」と指摘します。ルーメリオーティスCEOは、生活支援サービスはビザの種類ではなく、個人の状況やニーズに応じて提供されるべきだと主張します。
「今のような状況においては、すべての人に対してセーフティネットが必要です。そうしなければアンダークラス(貧困層)が生まれ、犯罪の増加、健康状態の悪化、ホームレスの増加、メンタルヘルスの問題などが出てきます。将来これらの問題への対応を迫られたときには、今よりももっと多額の費用がかかります」
「誰も置き去りにすることがないようにしなくてはなりません。もしそうできれば、コロナウイルスの後の社会を今よりも良くすることができます。そうしなければ私たちはまた、社会全体としてではなく経済によってすべての価値が計られる状態に戻ってしまいます」。
SBS Radioは連邦首相のオフィスにコメントを求めましたが、得ることができませんでした。
COVID-19のウイルス検査はオーストラリア各地で広く普及しています。風邪やインフルエンザのような症状がある場合は、医師またはコロナウイルス・ヘルスインフォーメーション・ホットライン(電話番号1800 020 080)に電話で問い合わせて、検査を受けましょう。
連邦政府が公開したウイルス追跡アプリ「COVIDSafe」は、使っているスマートフォンのアプリショップからダウンロードできます。
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