2011年以降、ホームレスと呼ばれる人々の数は14パーセントも増加しました。この数は、オーストラリアのどこかで毎晩、200人に1人の割合で、不安な夜を過ごす人がいるという計算になります。
2016年のセンサス(国勢調査)によると、国内で実に11万6000人以上が、安心して暮らせる家を持たないという状況に置かれているのです。
ホームレスといっても、街角や公園で野宿をする人たちばかりと限りません。11万6427人に上るホームレスの内、そういう人は全体の7パーセントです。ホームレスと見なされる人々の大多数は、危機的状況にある人のための臨時宿泊所やキャラバンパーク、また非常に過密な環境で暮らさざるを得ない人たちです。
このうち5人に2人は25歳以下の若者です。また、過去5年で、ホームレスの女性の数は9.5パーセント増加したといわれています。この背景には、深刻化するDV(ドメスティック・バイオレンス)に加え、住宅価格や家賃の高騰のため手頃な住居が不足していることがあります。
家賃の値上がりにつれて、ホームレスも増える
慈善団体ミッション・オーストラリアのニューサウスウェールズ州支部長、エヴァリン・タドロスさんはこう話しています。
「家賃は上がり続けています。所得の低い人たちはこうした値上がりを賄えません。オーストラリアに来たばかりの人たちがよく、過密な状況で生活しているのも目にしますが、公営住宅や手頃な物件が不足していることが何よりの問題です」
Council to Homeless Persons などの団体でホームレス問題に取り組んでいるジェニー・スミスさんも、オーストラリアがこの住宅難に対し国レベルでの取り組みを行っていないことを指摘します。
「低所得者向けの住居を何とか確保するという点で、国レベルの計画はなにもありません。市場に任せておけばいいといいますが、過去30年も40年も、これまでにないほど繁栄したのに、市場は何もしてくれてません。政府は公営住宅の事業から手を引いてしまっていますが、もう一度着手しない限り、ホームレスの問題はこれからも、もっと速いスピードで増え続けるでしょうね」
ジェニーさんは、家庭内暴力や住宅難といった問題がホームレスを生んでいるのであり、一人ひとりの弱さではない、と力説します。
「私たちの社会では、ホームレスの問題は、移民だったり、精神疾患や中毒症状などの障害を抱える人だったりと、個人の弱さだと捉える見方がありますが、私はこれをとても残念なことだと思います。個人個人の問題じゃないんです。社会の中で貧しい人たちが、現在の住宅市場で住む家を確保するのは明らかに無理ですし、ホームレスになる可能性が非常に高い。もっとがんばればいい、って話じゃなく、住宅市場の、もっと手に届きやすいレベルで、必要な数の住宅が全く不足しているということなんです」

Source: Ann Marie Calilhanna
このホームレス問題で、特に大きな打撃を受けているのが、移民たちです。ミッション・オーストラリアのエヴァリン・タドロスさんによると、11万6000人を超える「ホームレス」のうち、44パーセントがオーストラリア以外で生まれた人々だといいます。
「多言語コミュニティーの人々や難民として来た人は、家庭や学校、社会からの断絶に直面することが多いですし、例えば難民の若者にホームレス化の前兆が見られます。また、オーストラリアに定着する上で、言葉や文化、教育といった更なるストレスに直面します。賃貸関係で自分が持つ権利について知らなかったり、家主に搾取されていたりする人もいます。また難民は他の移民グループに比べ、認められる資格や職務経験がないことから、労働市場に参加する割合が低いことも、統計結果から分かっています。
支援の手は、すぐそこに
もしも、住む家を失いそうだ、またはすでにホームレス状態になっている、という方がいらっしゃれば、支援を求めることをお勧めします。各種団体が、家主との交渉を手助けしてくれたり、緊急時の住居や暖かい食事を提供するサービスを行っています。
システムは州によって違います。例えばニューサウスウェールズ州の場合、安価な住居を提供してくれる Mission Australia Housing(電話:1800 888 868)や、各種サービスを提供している Link2Home(電話:1800 152 152)があります。また、家庭内暴力から逃れる女性のためには 1800 Respect(電話:1800 737 732)というサービスもあります。
また、ビクトリア州では、ホームレス状態にある人のための無料通話番号が1800 825 955、DVの被害を受けている女性のためには Safe Steps(電話:1800 015 188)などのサービスがあります。
英語以外の言葉を希望する人には、場所により通訳・翻訳サービスも受けられるということです。
また、SBSでは、8月14日火曜日から16日木曜日にわたり3日間、Filthy Rich and Homeless のシリーズ2が放送されます。この番組はお金持ちやセレブリティーがホームレスとしての生活を体験し、社会から見捨てられた彼らの状況に光を当てるという番組です。SBSチャンネルで午後8時半からの放送ですので、ぜひご覧ください。

Bunks in a homeless shelter Source: iStockphoto