オーストラリアのワクチン接種計画の遅延が家族の再会を阻む

オーストラリアの新型コロナウイルスワクチン接種計画が遅延しており、 国境閉鎖の解除は、まだまだ時間がかかるであろうと専門家はみています。 国境を挟んで離れ離れになっている家族の不安は増すばかりです。

Maninder Mehta and his mother are stuck in the city of Patiala in Northern India.

Maninder Mehta (right) and his mother are in the city of Patiala in northern India. Source: Supplied

今年の一月、マニンダ・メータさんはシドニーに妻と子供達を残し、インドへ旅立ちました。重症で心臓手術が必要な父親に会うためでした。

彼はまた70歳になる母親をサポートしたいと考えていました。インドには、母親をサポートする家族がいないからです。

SBSニュースに ”残念ながら父は手術の後、二月に亡くなりました。家族全員がショックでしたが特に母は打ちのめされました。“

“そして今、私の母はかなり弱い立場にあります。私の父はとてもアクティブな人間でしたが、母は完全に彼に依存して生きていました。 私の家族は母をオーストラリアに連れて帰りたいと考えています。そうすれば家族一緒に喪に服することができるんです。”

しかし、オーストラリアの国境の閉鎖によって、彼の母親がファミリースポンサービザの対象であるにも関わらず、マニンダさんの望みはかなえられていません。。

彼の家族が、母親の医療や隔離のための経費をカバーすると保証しているにもかかわらず、彼女の母親はトラベルビザの申請を九回却下されています。 さらに、母親は既に アストラゼネカ社の一回目のワクチン接種を済ませています。

現在、マニンダさんは仕方なく母親とインドに残っています。
”なぜ私は、弱い母親と私の幼い子供のどちらかを選ばなければいけないんでしょう“
Happier times: Maninder and Shail Mehta with their parents and their sons.
Happier times: Maninder and Shail Mehta with their parents and their sons. Source: Supplied
マニンダさんの兄弟、シェールさんはパースに住んでいます。彼は父親が病気の間、コンパッショネート渡航許可が下りませんでした。渡航許可は、父親が亡くなった後で初めて下りました。

今、彼はオーストラリアで隔離中です。ですが、インドで新型コロナウイルスの感染者数が急増しているのを見て、母親と兄弟を心配しています。

“私の母は高血圧で 糖尿病の治療を受けています。医者は母親の血糖値が下がった時に 死ぬ危険性があると話しました。ですが、彼女はまだ父の死に悲しんでいるためによく薬を飲むのを忘れるのです。”

マニンダさん・シェールさん兄弟は、オーストラリアのワクチン配布によって彼らの家族のようなケースに対し、早く国境閉鎖が解除されることを期待しています。

しかし、アストラゼネカ社のワクチンに対する新しい医療上のアドバイスによって、国のプログラムはさらに遅れています。 また、国境閉鎖を解除するには、これらのワクチンがパンデミックを抑えるのにどれくらい有効かによる、という専門家の意見があります。メータ家の兄弟にとって、これらのニュースは非常にもどかしいものです。

“この供給とワクチン計画展開の遅れ、そしてミスマネジメントによって、さらに長く家族と引き離されるのです” (マニンダさん)

オーストラリアのCOVID-19感染者は少ないが、国境閉鎖による感情への影響は異なるとシェールさんは語ります。
“私たちは、家族の破壊・ビジネスの破壊といった形でこの国のCOVID-19の影響を受けています。何かがおかしいとおもいませんか?アストラゼネカといっしょに、すべてを同じ領域で考えているからではないでしょうか?”(シェールさん)

'Behind the eight ball' 困った立場のオーストラリア

メータ家だけが問題を抱えているわけではありません。

何万人ものオーストラリア国民が、帰国できない状態でいます。これ以上のワクチン接種プログラムの遅延は、彼らを帰国させるスピードを上げることはないでしょう。

他のオーストラリア国民もまた、愛する人たちに会うために海外渡航できる日を待っています。

世界保健機構(WHO) COVID-19パネルメンバーの疫学者マリールイス・マックロース氏は多くのオーストラリア家庭が、引き離されており、困難を感じていると話します。

“私たちの人口の半数近くが、海外で生まれているか、両親が海外で生まれています。彼らにとって家族や友人に会えないということは非常につらいことです”(マックロース氏)

先週、ワクチンの専門家が50歳未満の成人にはファイザー社のワクチン接種が好ましいと発表しました。当初、政府はアストラゼネカ社のワクチンをオーストラリアのバックボーンとして採用していました。そのため、血栓をめぐる新しい発見により、ワクチン接種プログラムは混乱に陥りました。
マックロース教授は、オーストラリアは現在“困った立場にある”、そして海外旅行が普通の状況に戻るまで一年かそこらはかかるだろうと話しています。

“オーストラリア国民は、ワクチン接種に対しよい理解者です。希望するオーストラリア国民の85パーセントが接種すると集団免疫ができるでしょう。”

“85パーセント、これは6か月で終了することを考えると、アストラゼネカ社・ファイザー社の両方を一日あたり20万本のワクチン接種をする必要があります。でも、これは現実的ではありません。供給量がこれに達していないからです。希望する国民の85パーセントに接種数を達成するために12か月かかるであろうと話しています。”

“人口に対しある一定数がワクチン接種をする前に国境閉鎖を解除するわけにはいきません。すべての人がワクチンを接種し、リスクがないことを確認する必要あります。”

'A failure' 失敗

一方で、予想よりも遅い進展に対し、修正版ワクチン接種計画を公表するべきだとの声が上がっています。


グラッタン研究所の、ヘルス・エイジドケア・プログラムのディレクター、スティーブン・ダケット氏はこう話します。
“第一フェーズ(昨年の8月から今年の3月)の目標、400万本は明らかに達成できていません。”
 
“物流の失敗、接種計画のモデルの失敗、ワクチン接種計画の過度な宣伝の失敗でした。プランニングの失敗だったのです。”

新しい接種計画が練られていますが、スコットモリソン首相は月曜時点で修正版のプログラム計画に日時を入れることを拒否しています。目標を設定するのは、COVID-19の習性からして実用的ではないためだと話しています。

フェイスブックのビデオで、モリソン首相は“何かが変わった時に、すぐに対応できなければいけません。いままでも多くの変化に対応しなければいけませんでした。”

“国際的な供給先のあちこちで拒否されたり、発生するかもしれないその他の混乱について、目標を設定するよりも、我々はそれに対応し続けます”

しかし、ダケット氏は、先行き不透明な目標は、全体的な信頼に問題を起こす可能性があると話します。

“目標がないことの利点は、政府が達成できなかったときにそれについて言及することができないということです。”

“政府がいつ、何をしようとしているかを説明しなければ、政府のワクチン接種計画を信頼できません。”

“私たちが集団免疫を持っていない間は、いつだってリスクがあります。人間であれ、ホテル隔離であれ。つい先だって、クイーンズランド州であったようにです。ですからワクチンはとても重要なのです。”
A healthcare worker is seen handling a AstraZeneca covid19 vaccination inside of vaccination centre
A healthcare worker is seen handling an AstraZeneca COVID-19 vaccine Source: AAP
国境閉鎖解除を含む“ワクチン・ノーマル”を望むオーストラリア国民は、ワクチンの遅れが頭にいつも浮かぶだろうダケット氏は話します。

“昨年の議論ではこう話されました。‘我々は、ワクチン接種するまではこれを継続しなければいけない。ワクチン接種がされれば、すべて普通に戻るのだから’そのため、すべての人々が息を殺して待っているのです。”

“国境閉鎖に関して、重大な問題があります。観光収入 の欠如、留学生の欠如、そしてホスピタリティや宿泊施設といったセクターへの影響です。”
月曜、ナショナル・COVID-19・コミッショナーのジェーン・ハルトン氏は、オーストラリアのワクチン計画についての懸念が高まるなか、落ち着くように求めました。

“皆さんへの秘訣をお話すると、まず落ち着いて基本に戻ることです。”

“国はワクチン接種が必要です。そのためにはワクチンが必要です。ファイザー社から今年末には合計4千万本のワクチンを受け取ります。”
ハルトン氏はナイン・ネットワークにこう話しました。

チーフ・メディカルオフィサー、ポール・ケリー氏は最初のフェーズとなるワクチン接種対象者、隔離施設、国境、ヘルスサービス、エイジドケア・障害者施設の職員と住人は、今年の半ばに終了すると話しました。

ダン・テハン貿易相は、水曜にヨーロッパへ旅立ち、ドイツ、ベルギー、フランスの関係者にワクチンの製造増加を求める予定です。



Additional reporting by AAP.



オーストラリアでは、他人から1.5メートル以上離れていなければなりません。お住まいの州における集まりの人数制限をご確認ください。風邪やインフルエンザの症状が出ている場合は、家に留まり、医師に電話して検査を手配するか、1800 020 080のコロナウイルス健康情報ホットラインに連絡しましょう。ニュースや情報は、63カ国語で提供されています。

お住まいのテリトリーのガイドラインをご確認ください.


 

 


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Published 13 April 2021 6:26pm
Updated 13 April 2021 6:32pm
By Jennifer Scherer
Presented by Kazuyo Kitada


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