世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長によると、新型コロナウイルスの起源を調べるために中国に派遣された調査団からデータが差し止められていました。
オーストラリアや日本を含む13ヵ国は、2019年末から始まったアウトブレイクに関するデータに「完全なアクセス」を与えるよう中国に対し至急求めました。
今年の1月から2月にかけて武漢周辺に4週間滞在したWHOの調査団は、中国の科学者と共同で作成した最終報告書で、ウイルスはコウモリから他の動物を介して人間に感染した可能性が高く、実験室からの流出が原因である可能性は「極めて低い」と発表しました。
調査団の1人は、中国がCOVID-19の初期症例に関する生データを提供することを拒否したと述べており、世界的なパンデミックがどのようにして始まったのかを解明する取り組みが複雑になる可能性があると述べています。
テドロス事務局長は、調査団との話し合いで「生データへのアクセスが困難であった」ことを知ったとし、「今後の共同調査では、よりタイムリーで包括的なデータ共有が行われることを期待する」と述べています。
今回の調査でウイルスの起源、そしてどのように感染が拡大したかを結論づけることができず、パンデミックがどのように始まったのか、そして中国がその解明に協力したのか、あるいはアメリカが主張するように妨害したのかを巡って緊張が続くことを意味します。
オーストラリア、カナダ、チェコ、デンマーク、エストニア、イスラエル、日本、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、韓国、スロベニア、英国、米国、欧州連合(EU)は共同声明を発表し、「SARS-CoV-2ウイルスの感染源に関する国際的な専門家による研究が大幅に遅れ、完全なオリジナルデータとサンプルへのアクセスが不足していた」と述べました。
調査団は、ウイルスが武漢の研究所から流出した可能性は極めて低いと結論づけた一方で、テドロス事務局長はこの問題について、中国への新たな訪問の可能性も含め、さらなる調査が必要であると述べました。
「今回の調査が十分に広範なものであったとは思いません」とテドロス事務局長はWHOの声明で述べています。
「より確かな結論を出すためには、さらなるデータと研究が必要です」
WHO調査団を率いるピーター・ベン・エンバレク氏は記者会見で、ウイルスが2019年11月または10月に武漢周辺で流行していた可能性は「完全にあり得る」と述べ、これまでに記録されてきた以前から、感染が海外に拡大した可能性があるとしています。

The WHO team were on a tightly-controlled mission to Wuhan to investigate the origins of COVID-19. Source: Getty
また多くのデータにアクセスできた一方で、個人情報保護法やその他の制限を理由に、「生データにたどり着くのが困難な分野もあった」と述べ、第2段となる調査が必要であるとしました。
エンバレク氏は、中国国外からも含め、政治的な圧力を感じたとする一方で、最終報告書から内容を削除するように迫られたことはない、と明かしました。
調査に参加したオーストラリアの専門家、ドミニク・ドワイヤー氏は、武漢のウイルス研究所に問題があったことを示す「明白な証拠」はなかったという結論に満足していると述べています。
欧州連合(EU)は、今回の調査を「重要な第一歩」としながらも、起源調査の開始時期が遅すぎたこと、専門家が長期間中国から締め出されていたこと、データや初期のサンプルへのアクセスが不十分であったことなどについて、改めて批判しています。
ジュネーブの国連大使であるウォルター・スティーブンス氏は声明で、「関連する場所やヒト、動物、環境データ、その利用可能なすべての情報にタイムリーにアクセスして」さらなる研究を行うことを求めていると発表しました。
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