今年のNAIDOC ウィークのテーマは「For Our Elders」、エルダー(長老)とは?

NAIDOCウィークは先住民の長老の重要性を祝うものですが、エルダーズに対する認識はさまざまです。

Two men in black T shirts look at each other while in discussion.

Yuin and Wailwan man Uncle Dean Kelly (L) and Wiradjuri and Yuin man Tyson Frigo agree on the importance of Elders but their perceptions differ. Source: SBS

キーポイント
  • 今年のNAIDOCウィークは、先住民の長老がこれまで、そしてこれからも果たす役割を認識することを目的としいる
  • 長老を認知する上の伝統や文化的習慣はさまざま
  • NAIDOCウィークの授賞式で、2人の先駆的な先住民エルダーが表彰された
今年のNAIDOCのテーマは「For Our Elders(長老のために)」。

先住民のコミュニティーや家族において長老がこれまで、そしてこれからも果たしていく役割を認識することを目的としています。しかし、エルダー(長老)とはどういった人物を指すのでしょうか?

エルダーの地位を認識する伝統や文化的習慣は、部族や家族グループによってさまざまです。
ユインとワイルワン族出身のアンクル・ディーン・ケリー氏によると、エルダーとは「振る舞い」によって定義されると説明します。

「私の考えるエルダーとは、コミュニティーや人々からその権利を得るものであり、人々があなたを尊敬し始めることによって、あなたが誰であるかを教えてくれるのです。あなたの振る舞いは重要なのです」

一方、ウィラジュリとユイン族出身のタイソン・フリゴ氏は、自分なりの認識を持っていると話します。

「私の個人的な意見では、エルダーとは、自分よりも年上の人です。その人のところに行けば、その人が生きてきた歴史の知識を教えてもらうことができるのです」

「私より若いエルダーも知っています。コミュニティーの中では、その身のこなし、文化的な知識やその分かち合いから、エルダーとみなされ、尊敬される人もいます」
A man with a serious face looks at the camera.
Wiradjuri and Yuin man Tyson Frigo says knowledge passed down from Elders is like a river. Source: SBS
フリゴ氏はシドニーのオーストラリア国立海洋博物館で先住民プログラムのキュレーターを務めています。

博物館の新たな展示、「Shaped by the Sea」は、ファースト・ネーションのキュレーター、長老たち、さらにはコミュニティーの協力によるもので、40以上のアボリジナルとトレス海峡の言語を表現しています。

フリゴ氏は、ケリー氏から知識を受け継いだことを、「river (川)」と表現しています。

「知識は流れなければならないし、淀んでいてはいけません。人から人へと受け継がれる必要があるのです」

「会話を通して口頭で伝えることもできますし、デジタル・スペースのウェブサイト 『Garigarang Garigaru 』を通して行うこともできます」

知識を守るために知識を共有

フリゴ氏は、エルダーから貴重なアドバイスを教わってきたと話します。

「恩師に言われた最も重要なことのひとつは、『維持するためにそれを与えよ 』というものです」

「その言葉はずっと心に残っています。もう彼はすでに亡くなっていますが、今でも耳に残っています」

「私たちの文化について意識を高めること、実践的な方法、あるいはヤル気を持って静かに座ることは重要です。なぜそれを守ることが重要なのか?それは、失いたくないからです」

ケリー氏は、エルダーは尊敬を得なければならないと言い、「エマージング・エルダー」という言葉には懐疑的だと付け加えました。
A portrait of a man looking at the camera.
Uncle Dean Kelly says Elders have earned the right to hold the term from their community. Source: SBS
「新興の長老たち、それは人それぞれですから、それを信じる人たちを批判するつもりはありません。もしあなたが、人々が寄ってくるような長老になり、知識、知恵、そしてそれに付随する他のすべてのキャラクターを備えた長老になるつもりなら、どこかで始めなければなりません。時間が教えてくれるだろうし、人々や地域社会がそれに応えてくれるでしょう」

ケリー氏は自分の知識を分かち合い、次の世代を育てる手助けをしたいと考えています。

「若者とともに活動することに、私はワクワクを感じます。頑張ろうという気持ちにさせてくれます。若者が文化的なことをうまくやっているのを見ると、自分はちゃんとできていると思えるんです」

NAIDOC アワーズ、先駆的な長老を表彰

土曜日の夜、NAIDOCウィーク授賞式が開催され、2人の先駆的な先住民長老が、それぞれのコミュニティーで人々の生活に多大な貢献をしたことが表彰されました。

アンティー・ドクター・マチルダ・ハウス・ウィリアムズは、1972年にアボリジナル・テント・エンバシーを設立し、アボリジナル・リーガル・サービスの設立に貢献した功績が認められ、女性エルダー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
A portrait of a woman looking at the camera with water in the background.
Ngambri (Kamberri) Wallabalooa (Ngunnawal) and Wiradyuri Elder Aunty Doctor Matilda House-Williams has won the female Elder of the Year Award. Credit: Blacklock Media
誇り高きンガンブリ・ワラバロア・ウィラジュリ族の長老は、この栄誉を受け、「私たち長老はとてもパワフルです。私は何事からも目を背けたことはありません。これ以上立ち行かなくなるまで戦います」と、感慨深げに語りました。

アレンテ族のウィリアム・ティルマス氏は、ホームレスの人々や危険にさらされている若者を支援する精力的な活動が評価され、男性エルダー・オブ・ザ・イヤーを受賞。

これらの賞は、ナショナル・ナイドック・パーソン、ライフタイム・アチーブメント、女性エルダー、男性エルダー、スポーツ・パーソン、ユース、クリエイティブ・タレント、国や文化への思いやり、教育、革新など、さまざまなカテゴリーでオーストラリア先住民を表彰するものです。
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Published 3 July 2023 6:05pm
Updated 5 July 2023 5:50pm
By Jennifer Scherer, Marcellus Enalanga, Caroline Riches
Presented by Yumi Oba
Source: SBS


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