内部告発サイト「ウィキリークス」の創始者、ジュリアン・アサンジ被告のパートナーは、英裁判所が被告の米国引き渡しを却下したことについて、被告の10年に渡るスパイ容疑との戦いにおける「正義への第一歩」であると述べています。
ヴァネッサ・バライスター判事は4日、オーストラリアの活動家でジャーナリストでもあるアサンジ被告を、精神状態の悪化と自殺の危険性を理由に、米国に引き渡すべきではないとの判決を下しました。
被告は2010年に47万件に上る米軍機密文書を公開したことをめぐり、米国で罪に問われています。
今回の判決は、アサンジ被告がロンドンのベルマーシュ刑務所からすぐに釈放されることを意味するものではありませんが、保釈条件の決定は6日に行われる予定です。
被告のパートナーであるステラ・モリスさんは、「今日ジュリアンが家に帰ってくることを望んでいました。今日ではありませんが、その日はすぐにやってくるでしょう」と語りました。
「ベルマーシュ刑務所の囚人として ジュリアンが苦しみと孤独に耐えている限り、そして私たちの子供たちが父親からの愛情を奪われ続ける限り、喜ぶことはできません。私たちは彼が家に帰ったときに初めて、祝うでしょう」
米司法省は、英裁判所の判断を不服として上訴する意向を示していますが、14日以内に申し立てる必要があります。
バライスター判事は、アサンジ被告が文書を公開する際に言論の自由を行使していたことや、被告に対する告発は政治的な復讐の一環であるとの主張を退けました。米国で18の罪で有罪判決を受けた場合、アサンジ被告は最高175年の禁錮刑が言い渡される可能性があります。
アサンジ被告との間に2人の子供がいるモリスさんは、米国政府が上訴を進めることについて「非常に懸念している」と語っています。
「(米国は)ジュリアンを罰し、彼の残りの人生を米国の暗くて深い刑務所の穴に追いやり、消そうとしています」
「それは決して許されるべきではありません。この国でも他の国でも、ジャーナリズムが犯罪であることは絶対に認めません」と述べました。
オーストラリアで暮らすアサンジ被告の母、クリスティン・アサンジさんは、今回の判決は「最高のニュース」だとしながらも、ドナルド・トランプ米大統領とジョー・バイデン次期大統領に息子の恩赦を求めました。
「1日でも早く息子を抱きしめられることを願っています。10年に渡るプロセス自体が罰でした。彼はもう十分に苦しみました」と自身のツイッターに綴りました。
アサンジ被告のリーガルチームの1人である弁護士のジェニファー・ロビンソン氏は、被告が厳重な警備が敷かれている刑務所で、「不釣り合いな時間を過ごしている」ことを理由に、6日には保釈申請を行うと、ABCニュースに5日朝語りました。

Julian Assange has been held at London’s Belmarsh Prison since his arrest in April 2019. Source: AAP
また、現職のトランプ大統領と次期米大統領のバイデン氏の両方に、「この事件に歯止めをかける政治的な機会がある」とも述べました。
「この事件は、そもそも提起されるべきではなかったのです」
「オーストラリア政府は、この事件に踏み切るべきです。彼(アサンジ)は、世界中で賞を受賞している出版社でありジャーナリストです。ウィキリークスはかつて、オーストラリアで最も優れたジャーナリズムへの貢献をしたとされる賞をはじめ、シドニー平和賞をも受賞しているのです。その同じ出版物のために起訴されているのです」
一方でメキシコのロペス・オブラドール大統領は、49歳の被告を、同国への政治亡命として受け入れる意向を示しました。
「アサンジはジャーナリストであり、チャンスを与えられるべきです。私は彼の恩赦に賛成です。我々が保護を提供します」と述べました。
ロペス・オブラドール大統領は、裁判所の決定を 「正義の勝利」と表現し、外務大臣にはアサンジ被告の解放の可能性について英国政府に手を差し伸べるよう依頼すると述べました。
「告訴は言論の自由への攻撃である」と主張するウィキリークス創始者の支持者らは、今回の判決を喜んでおり、内部告発者エドワード・スノーデン氏も、今回の判決が、アサンジ被告を米国に連れ戻そうとする試みの「終わり」を示すことを期待しているとツイートしました。
「これで終わりにしましょう」と述べたスノーデン自身も、スパイ容疑で米国で指名手配されており、彼は現在、ロシアで亡命生活を送っています。スノーデンは、国家安全保障局が何百万人もの市民の電話記録を収集していたことを示す情報を流出させた罪に問われています。
アムネスティ・インターナショナルは判決を歓迎する一方で、「英国が米国の要請でこの政治的に動機づけられたプロセスに関与し、メディアの自由を裁判にかけたことを許すものではない」と述べました。
アサンジ被告はロンドンのエクアドル大使館に亡命して7年以上を過ごしていましたが、スウェーデンは彼の2つの性的暴行の告発を受け、身柄引き渡しを求めると発表。アサンジ被告はこれらの疑惑を否定しています。
性的暴行の捜査は2017年に不起訴となりましたが、その1年後の2018年、エクアドルのレーニン・モレノ大統領は、アサンジを受け入れることが「手に負えなくなった」と述べ、4月に彼のエクアドル市民権を剥奪。外交的保護を取りやめたことを受け、アサンジは逮捕されました。
With AFP
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