サーフィンの五輪デビューまで残すところ3日。
開催地である千葉県一宮町も、屋外イベントながら緊急事態宣言により無観客開催が決まっています。
一宮サーフィン業組合の組合長で、招致活動にも携わってきた鵜沢清永さんは、「仕方はありませんが、非常に残念」と語ります。
「外での競技だったので、無観客にはならないだろうという期待が大きかった分、落ち込みは大きい」
「今となってはあとの祭りですが、政府がもっと早く対応できたんではないか、オリンピックに向けてもっと何かできたのではないか」と語ります。
人口1万2千人の小さな町、一宮には年間6万人以上のサーファーが訪れ、それによる町への経済効果、サーフォノミクスは32億円に上るとされ、五輪の開催期間だけでも10億円の経済効果が見込まれていました()。

President of Surfing Industry Association Ichinomiya, Kiyohisa Uzawa (third from left) Source: Kiyohisa Uzawa
しかしコロナウイルス感染拡大による度重なる自粛や五輪の延期など、事態は一変。大打撃を受けた一宮の飲食店は昨年、クラウドファンディングを通して、1年後の五輪開催までつなぎとめようとしてきました。
しかし1年が経ち、いざ蓋を開けてみると、日本の感染者数は収まりをみせず、1年前よりも状況は悪化しています。

The town is far from the Olympic elation Source: Kiyohisa Uzawa
「この小さな町からオリンピック選手が出て、みんな観にいきたい、そう誰もが思っていました」
「せめて子どもたちには観せてほしい。市には最後までいろんな方面で粘ったけど、ダメでした」
一宮で暮らす多くの子どもたちがサーフィンをするなか、世界のトップレベルを観ることは貴重な経験であり、「普通の授業と変わりない」と言います。
2019年には豪サーフィンチームのジュリアン・ウィルソン選手、サリー・フィッツギボンズ選手、ステファニー・ギルモア選手の3人が、ISA ワールドサーフィンゲームに先立ち、一宮の地元の学校を訪問し、国際交流を行っていました。
「目と鼻の先でやっているのに、応援できないもどかしいさがある」と続けます。
大原選手のことは、小学2年生の頃から知っており、同じビーチでサーフィンをしていたという鵜澤さん。
「愛されキャラで、誰からも可愛がられている。だからこそ、直接応援できないのは余計に残念」と語ります。
地元では「志田下」と呼ばれてる五輪会場、釣ヶ崎は、波が小さいことで知られていますが、日本の最東端に位置しているため、季節や天候に応じてあらゆる方向からのうねりを受けることができるポイント。
千葉県在住で、五輪ではビーチのテクニカルアナウンサーとして努め、WSLやISAの解説者としても知られるベン・ウェイさんは、志田下を「ハイパフォーマンスな波」と表現。「エアリアルやプログレッシブ、伝統的なパワーサーフィン、そして適切な角度でうねりが入ればバレルも...と、あらゆるスタイルのライディングに対応できる」と語っています。
「ビーチブレイクで、癖がある」という鵜澤さんは、「(大原選手は)それを知り尽くしているから、ホームアドバンテージはある」と期待を寄せています。

Ben Wei. technical beach announcer for surfing Tokyo 2020 Source: Ben Wei
WSLランキング6位に浮上しており、メダル獲得が期待されている五十嵐カノア選手も、長年にわたって釣ヶ崎でサーフィンをしてきました。
一方で、オーストラリアのオーウェン・ライト選手は、日本に向かう直前の記者会見で、小さなコンディションでは「パワーを出せるかどうかはサーファー次第」と語り、そのためには「準備が必要」だと、小波での練習を重ねてきたと明かしました。女子メダル候補のサリー・フィッツギボンズ選手は、「急速なエネルギーと敏捷性」が鍵を握るとしています。
五輪サーフィンは7月25日に開幕し、4日間にわたり開催される予定ですが、天候や波のコンディションを考慮し、予備日も8月1日まで設けられています。
「日本のサーフィン人口を増やすためにも、日本のビーチを世界にアピールするためにも、オリンピックには期待している」という鵜澤さん。
ウェイさんもこのような状況ではあるものの、「サーファーがこれまでに演じたことのないような大きなステージを作る瞬間を目前に、関係者は興奮している」と語ります。
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