オーストラリアで皮膚癌から身を守るには? セトルメントガイド

オーストラリアは世界で最も皮膚癌の発生率が高い国のひとつです。メラノーマを含むほとんどの皮膚癌は、太陽の紫外線を無防備に浴びることで皮膚細胞がダメージを受けて発生します。

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Source: Getty Images/Matteo Colombo

オーストラリアはなぜ世界で最も皮膚癌の罹患率が高い?

オーストラリア統計局(ABS)によると、2017-18年に癌を患っていたオーストラリア人の約3人に1人(30.8%)が皮膚癌であり、皮膚癌は国内で最も多い癌となっています。


ハイライト

  • 太陽の紫外線(UV)を過剰に浴びることで皮膚細胞のDNAが損傷

  • 肌の色が濃い人は危険度が低いものの、皮膚癌になる可能性はある

  • 肌の色が濃い人は、ビタミンD不足のリスクが高い


QIMRバーグホーファー医学研究所で、癌制御グループを率いるデビッド・ホワイトマン教授は、地理的条件や移住など、さまざまな要因が絡み合っていると言います。

「南半球のオーストラリアはかなりの低緯度に位置しているため、地上に降り注ぐ太陽光の量は、ヨーロッパや北アジア、北米などの地域に比べてはるかに多くなっています。そのため、私たちが住んでいる場所の地表には、たくさんの紫外線が降り注いでいます」と語ります。
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Source: Getty Images/maps4media
また太陽の周りを地球がどう回るかにも関連しており、オーストラリアの夏は、北半球の夏に相当する時期よりも太陽に近いため、より強力な太陽光を浴びると説明します。

ホワイトマン教授によると、オーストラリア人の多くは肌の色が白いヨーロッパ人の血を引いていることから、太陽の光が強いオーストラリアの環境には適していないと言います。
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Source: Getty Images/MB Photography

太陽を浴びることで、どう癌が引き起こされるのか?

太陽の紫外線(UV)を過剰に浴びると、皮膚の細胞にDNAの損傷が生じ、このダメージが蓄積されると、癌の原因となります。

シドニーのGPで、皮膚癌の専門家でもあるアフマド・ハサニエン氏は、紫外線が皮膚に当たると、最も表層にある細胞のDNAが変化し始めると語ります。

「癌細胞は毎日、毎年と進化し、それは、癌の基礎となる軽度のものから、生命を脅かす可能性のある中程度の癌、命取りとなるメラノーマへと変化していきます」
体内のDNA修復機構がこの損傷を修復できないと、誤った細胞複製が起こり、細胞の異常な増殖を誘発し、最終的には癌になってしまうのです。

ハサニエン氏によると、オーストラリアの典型的な夏の日のUVインデックスは非常に高く、無防備に日光を浴びることは、高いリスクを意味すると言います。

「オーストラリアの典型的な日のUVインデックスは12ですが、私はこの数字でも外出を避け、子供を外に出すことも避けるでしょう」

晴れた冬の日のUVインデックスは中程度の3~4で、紫外線の持続時間も短い一方で、夏は、午前8時から午後4時半までの間、ほとんどの場合、12から14の間のレベルに達しています。
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Source: Getty Images/Stuart Westmoreland

「スリップ、スロップ、スラップ、シーク、スライド」

オーストラリア癌評議会の皮膚癌委員会の前議長であるペイジ・プレストン氏は、オーストラリア人に、外出前にSunsmartアプリやBureau of Meteorology(気象局)のウェブサイトで、自分の住んでいる地域の紫外線量を確認するよう呼びかけています。

「UVレベルが3以上の時は、複数の方法で紫外線から守ることをお勧めします」

「UVレベルが3以上の時は、できるだけ多くの肌を覆う服を着て(スリップ)、SPF30以上の日焼け止め、またはブロードスペクトラムで耐水性のある日焼け止めを塗り(スロップ)、顔、首、耳を覆う帽子をかぶり(スラップ)、日陰を探し(シーク)、サングラスをかけましょう(スライド)」
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Source: Getty Images/Elizabeth Fernandez

肌の色が濃い人は皮膚癌になるリスクが低い?

人間の皮膚の色はさまざまですが、その色を決めるのがメラニンで、多ければ多いほど肌が濃くなります。

ホワイトマン教授よると、メラニンは、皮膚細胞の核の周りにシールドのような小さなバリアを張り、紫外線をすべて吸収し、細胞内のDNAの損傷を食い止める作用があると言います。

そのため肌の色が濃い人はリスクファクターが低いと言われますが、これは「リスクが全くないというわけではない」と語ります。

ハサニエン氏によると、彼の診療所を訪れる皮膚癌患者には、肌の色が濃い人も多くいると言います。

「紫外線は皮膚癌のリスクであり、色黒の人も色白の人も、同じリスク要因にさらされています」

「色黒の人は保護されていますが、常に保護されているということではありません。色が濃くても誰でも皮膚がんになる可能性はあります」

ビタミンD欠乏症

しかし皮膚癌を恐れて太陽光を避けると、特に肌の色が濃い人は、逆にビタミンD欠乏症になる可能性があります。

キャンサー・カウンシルのペイジ・プレストン氏は、そのような人は、長時間太陽の下に身を置くよりも、ビタミンDのサプリメントについてかかりつけの医師に相談すべきだと言います。

「ビタミンD不足のリスクがあるグループは、メラニン色素が多く、肌の色が濃い人、宗教的・文化的理由で肌を隠している人、そして高齢者です」と彼女は言います。

日焼けする

ホワイトマン教授はこの夏、日焼けをしようと考えている人たちへ、注意を呼びかけています。

「日焼けは肌とDNAにダメージを与えます」
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A crowded Bondi Beach, in NSW, on a Summer day. Source: Getty Images/Matteo Colombo
日焼けは体に衝撃を与えます
「日焼けをすると肌の色が濃くなるのは、体のレスキュー反応のようなもので、皮膚細胞はダメージを受けた後に濃くなります」

「これは、馬が駆け出した後にゲートを閉めるようなもので、皮膚がそれ以上のダメージを受けないようにしようとするものです」

ホワイトマン教授は一度日焼けをすれば、さらなる日焼けを防ぐことができるそうで、これは人間が進化した結果だと言います。

しかし、肌やDNAにダメージを与えないと日焼けはできないため、日焼けをすれば太陽のダメージから身を守れると勘違いしないよう、呼びかけています。
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Published 28 October 2021 2:18pm
Updated 28 October 2021 4:31pm
By Chiara Pazzano
Presented by Yumi Oba


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