ニューサウスウェールズ州の公立高校では、今後ナイフの携帯を、それが宗教上の理由であっても禁止されることが発表されました。これまでシク教徒は宗教上の理由から宗教用具である儀式用ナイフを携帯することが許可されてきましたが、これが生徒が学校に武器を持ち込める抜け道になるとして、今回禁止が命じられました。
シドニー北西部のグレンウッド・ハイスクールでは先日、10代の男子生徒が、キルパンと呼ばれる、シク教徒の宗教用具で、他の生徒を刺すという事件が発生しています。
しかし、一部のシク教徒のリーダーたちからは、この禁止令が彼らのコミュニティとの十分な協議が行われないまま決断されたことであるとし、不満を感じていると述べ、州における宗教の自由の保護についても疑問を投げかけています。
シク教の慈善団体「ターバン 4 オーストラリア」のチャランジット・シン氏は、同コミュニティはいまだに「ショックを受けている」と述べています。

The kirpan is a type of ceremonial knife carried by the Sikh community as an article of their faith. Source: SBS
「これは不幸な出来事であり、あってはならない事件です。しかし、この禁止令は、私たちに相談なく出されたものです」とSBSニュースに語っています。
この禁止令は19日水曜日から、ニューサウスウェールズ州の公立学校のすべての生徒、スタッフ、訪問者に適用されます。
シン氏は、キルパンはシク教徒の主要な信仰の象徴の一つであり、これを携帯できない生徒にとっては「精神的なストレス」になる他、このような禁止令は、一部のシク教徒の生徒が学校で直面しているいじめという「根本的な問題」の解決には役立たないと強調。
「保護者たちは、さらなるいじめを引き起こす可能性があると懸念を抱いており、会合を開いている」と述べています。
グラディス・ベラジクリアン州首相は、先日校庭内で起きたナイフ事件にショックを表しており、「生徒はいかなる状況下でも学校にナイフを持ち込むことを許されるべきではない」と、取り締まりを示唆していましたが、18日、「どんな形であれ、学校に武器を持ち込むことは適切ではない」、と改めて述べました。
ミッチェル教育相は、学校にナイフを持ち込むことは、地域社会の期待に沿わないものであり、政府はこの抜け穴を塞ぐための法改正を行う予定であると述べました。
「暫定措置として、学校には宗教的な理由によるナイフの携帯が禁止されるというアドバイスを送っています」とシドニーの2GB ラジオで述べています。
今回の事件について、シク教徒の代表者と話したというミッチェル氏は、彼らは心を痛めていると明かす一方で、「我々は行動する必要があり、それは地域社会の感情に沿ったものであり、また教育相としての責任に沿ったものだ」、「学校が生徒やスタッフにとって安全な場所であることを確認するためには、今回の行動を起こす必要がある」と述べています。
シン氏によると、ターバン 4 オーストラリアは、政府の禁止令について17日月曜日の会議で知らされたとし、「今回の件について遺憾の意を表明し、この問題に対処するためのオープンな対話を求めている」としました。
「しかし、政府はすでに決断済みです」
シン氏は、同グループは州当局とのさらなる対話に前向きであるとし、「誰にとっても安全で、自分たちの宗教も実践できるようにするための方法を進めたい」と表明しています。
ベラジクリアン州首相によると、政府は小刀に代わるシンボルなどについても議論したと述べています。
「政府は、自分の信仰を貫くことの意義と重要性を理解しています...私たち全員が前進するための妥協点があると考えています」。
法律的な制約はない
ニューサウスウェールズ大学の法律専門家であるジョージ・ウィリアムズ教授は、州政府は人の宗教的な遵守を制限することについて、法的な制約はないと述べています。
「それは、憲法が宗教の自由を尊重することを要求していないからであり、法律的な制約がない以上、自由である」とし、州は「その気になれば、さらに踏み込むことができる」とSBSニュースに語りました。
「ニューサウスウェールズ州では宗教の自由は保護されておらず、政府には他の宗教活動を禁止する上での制限などはない」と言います。
「自制心、常識、良識の問題であり、法的な制限があるかどうかは問題ではありません」。
With AAP.
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