世界で最も象徴的なランドマークのひとつであり、2つの遺産にも登録されている、オーストラリアの真っ赤な中心部には、世界中から何千人もの人々が集まります。
しかし、アナング族の伝統的な所有者たちにとって、ウルルはそれ以上のものであり、巨大な赤い一枚岩のすべての溝は、彼らの文化や歴史、土地とのつながりを物語っていると言います。
ベッシー・ニッパーさんは、1985年に父親と他のアナング族がこの土地の所有権を返還された瞬間を思い出しながら、
「父と他のアナングがこの土地、この国、ウルルを取り戻したとき、私はまだ若い女性でした」、「母親になり、そして孫が生まれた今も、私はここウルルに住んでいます」と ピジャントジャジャラ語で語りました。
昨年のウルル返還記念日には、地元の人たちから「ウルルの傷跡」と呼ばれていた登山道の閉鎖が行われました。

Uluru is one of the world’s most iconic landmarks. Source: Aneeta Bhole/SBS News
「登山が閉鎖されたときは嬉しかったです」、「登山を止めたという事実に私たちはみな喜んでます」とニッパーさんは言います。
ニッパーさんの妹のテレサさんは、それは明らかな決断だったとも語っています。
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ウルル登山 26日から全面禁止へ
「海外に行くとき、私たちはその文化に敬意を払い、案内してもらうのを待ちますよね」
「私たちの岩は神聖なものです。岩に敬意を払っていたので、長い間、誰も、私たちの曾祖父たちさえも岩に登りませんでした」
「『プクルパ』とは、幸せを意味します。登山が禁じられたとき、とても幸せでした」
ウルル・カタ・ジュタ国立公園のレンジャーで、ウルルのふもとに永久閉鎖の標識を設置する手伝いをしたというリンダ・ライトさんは、そのふもとに立ち、標識を指しながら、その瞬間の記憶は一生残るだろうと振り返りました。

Theresa Nipper: "That’s our rock, it’s sacred". Source: Aneeta Bhole/SBS News
「この瞬間に立ち会えたことは、とても名誉なことでした」
「当時、伝統的な所有者を含む多くの人々がここに来ていましたが、彼らの幸せと喜びの涙を見ることができ、とても感動的でしたし、今でもその感動は残っています」
閉鎖を受け、地元企業からは、訪問者数の減少を懸念する声があがっていますが、国立公園の運営マネージャー、スティーブ・ボールドウィンさんによると、訪問者数はたしかに減少しているものの、COVID-19による国境閉鎖のなかで、登山の禁止が観光業に与えた真の影響を判断するのは難しいと述べています。

The climb has been closed for a year. Source: Aneeta Bhole/SBS News
「私たちは、国境の再開とフライトの再開によって、観光客の足が戻ってくることを非常に期待しています 」
また、ボールドウィンさんによると、この地域を訪れる人のタイプにも変化が見られ、「自然の特性や文化を体験しに来る人が増えている」そうで、「我々の調査によると、人々は伝統的な所有者との交流を求めており、文化についてもっと知りたがっている」と続けます。
登山の閉鎖以降は、ウルルの「傷跡」(登山道)の写真や動画の公開を阻止するための措置がとられており、先月、グーグルはバーチャル登山を止めるために、聖地の画像を削除しています。

Park ranger Lynda Wright and operations manager Steve Baldwin. Source: Aneeta Bhole/SBS News
しかし、この状況のなかでも同地域を訪問することができる人たちは、登山が閉鎖されていても、中央砂漠へ旅をすることに思いとどまってはいないようです。
30年以上も前にこの地域を訪れ、友人のバックパッカーたちとウルルに登ったというリンダ・フレンチさんは、当時ウルルは観光の目玉ではなかったものの、「誰もがそれ(登山)をしていた」と語ります。
「ウルルのふもとを歩いたことを覚えています 。ロックアートがありましたが、当時は近くまで寄ることができました。仕切りなどもありませんでした」

Tourists enjoy Uluru at sunset from a distance. Source: Aneeta Bhole/SBS News
「今この場所はケアされており、はるかに良くなったと思います」
返還35周年を祝うために、ウルルではささやかなセレモニーが行われる予定です。