外国政府がオーストラリアの移民コミュニティーで、個人やその家族に対して脅迫や危害を加えることをほのめかし、移民の言動を監視・管理しようとしているとして、国内トップのスパイ機関オーストラリア保安情報機構(ASIO)が警告しています。ASIOがこのほど、移民コミュニティーが直面する懸念を調べる連邦議会の委員会(The Foreign Affairs, Defence and Trade References Committee)による審議会で提言を行いました。
ASIOは、外国政府はその移民コミュニティーに介入することで、体制の脅威となるような反対派を押さえ込んでいるといいます。
ASIOは提言で「さまざまな移民コミュニティーに属する多くの個人が、政治的・イデオロギー的な意見を公に発表していることを理由に、自身やその家族が脅迫されていると報告していることを認識している」としています。
また外国政府が、その国の移民のコミュニティーに働き掛け、メンバーが他のメンバーを監視し、指示や影響を与えることを画策しているケースがあるといいます。
ASIOによると、ASIOは100以上の異なった民族・宗教グループと積極的に手を携え、それぞれのコミュニティーが国内そして国外で直面する問題を特定しようとしています。これらのグループと協力関係を築くことが、オーストラリア国内外の脅威を見極める上で「非常に重要な要素」だと考えています。
提言でASIOは、テロリズムの主要な脅威は引き続きイスラム過激派にあるものの、極端な右翼過激主義の影響を受けた個人がもたらす脅威もオーストラリア国内で姿を現しつつあると指摘しています。
難民の弱い立場
政府の諮問機関オーストラリアン・マルチカルチュラル・カウンシル(AMC)は別の提言で、オーストラリアにいる難民は、外国政府からの圧力や脅迫に対して最も弱い立場にあると注意を喚起しています。
AMCは「オーストラリアの難民コミュニティーとその難民が逃れてきた本国政府との関係は時折緊張が高まるときがある」とし、「外国政府のエージェント(工作員)からの攻撃から難民を守ることは連邦政府の責任」だと提言で述べています。
連邦政府は昨年、外国からの干渉リスクが高まっていることを受けて、対策を強化するタスクフォースを設置しています。
多様なバックグラウンドのリーダーシップ
オーストラリア人権委員会もこの審議会に証拠を提出し、国内のゼノフォビア(外国人嫌悪)と人種差別に対抗するには、全国的な反人種差別戦略が必要だと主張しています。
そのためオーストラリア人権委員会は提言で、オーストラリアの多文化社会を反映するため、多様な文化的バックグラウンドを持つ人のリーダーシップを高める取り組みを、連邦政府が検討するよう提案しています。
オーストラリア人権委員会はさらに、コロナウイルスのパンデミックにより、国内の移民コミュニティーとのコミュニケーションそして協力関係を強化するには、さらなる改善が必要なことが示されたと警告しています。
The Foreign Affairs, Defence and Trade References Committeeは審議会に提出された証拠について報告書を作成し、年内に発表する予定です。