中国・武漢から避難してきたデビッド・ファンさんは、かつて難民収容所だった施設での生活を不安に思っていました。実際に建物にはさびが目立ち、ワイファイも使いにくく、利用が集中する食事時はさらに不安定になります。
ファンさんは22歳のシドニーの学生です。クリスマス島に避難したオーストラリアの市民権・永住ビザ保持者約270人の1人です。

Medical personnel preparing for the arrival of evacuees on Thursday.Credit... Source: Richard Wainwright/EPA, via Shutterstock
フアンさんは、新コロナウイルスの「震源」となっている武漢を脱出できたことで安心し、隔離生活に対してある程度の覚悟ができていました。
避難してきた人をクリスマス島の元難民収容所で隔離することについては、医療の専門家から批判の声が上がっています。より良い設備を備えた本国の軍の施設で受け入れを行うべきとしています。
実際にクリスマス島での隔離生活について、想像以上に悪いという人もいますが、フアンさんは個人的には耐えられるレベルだといいます。
避難してきた人の中には、収容所のベッドに死んだ蛾がいたり、床に死んだゴキブリを見つけ、最初の夜を施設の掃除に費やした人もいます。しかしファンさんはそれほど気にならなかったそうです。

Evacuees arriving at the airport on Christmas Island.Credit... Source: AAP
ファンさんは電話で「部屋が汚れているのはもちろん良いことではありません」とした上で、「ですが、とにかく多くの家族を受け入れなければならなかったということも考えなければなりません」と語りました。
ファンさんによれば、収容所の職員は、避難してきた人の要望に応えています。
食事で野菜や果物が増えたほか、石けんやたばこ、日焼け止め、熱帯の気候に合った短パンやサンダルも支給されました。それまでは中国から持ち込んだ服を着ていました。
Xbox 360でビデオゲームをすることもできます。ゲームをして時間をつぶす人もいます。
隔離中の人は、QRコードのついたリストバンドを装着します。QRコードをスキャンすると、その人の医療記録を見ることができます。マスクをつけて全身を防護服に包んだ医師が毎日、検温を行います。

A member of the medical team playing football at the detention center.Credit... Source: Shutterstock
家族は2人1室に分かれます。ファンさんは父親と同室、母親と兄弟が別の同じ部屋にいます。部屋には二段ベッドと机があり、シャワーとトイレは共同です。
ファンさんは毎日起床後に建物の外を散歩し、朝食をとって、検査を受けます。ファンさんは学校でゲーム開発を学んでいますが、部屋に戻って数時間コンピューターゲームをします。
その後再び散歩に出かけ、自分のソーシャルメディアをチェックします。有り余る時間を生かし、ファンさんの母親がファンさんに中国語の漢字の読み書きを教えています。「この繰り返しです。これが私の毎日のスケジュールです」とファンさんはいいます。
ファンさんにとって隔離生活で一番つらいことは、見知らぬ土地で周りから隔離されていることです。シドニーの友達を恋しく思うといいます。