連邦政府のスコット・モリソン首相と日本の菅義偉(すが・よしひで)首相が20日夜、電話会談を行いました。モリソン首相の報道官によると、16日夜に内閣を発足させたばかりの菅新首相と会談を行った外国首脳は、モリソン首相が最初となります。
モリソン首相は菅首相に対して首相就任の祝いの言葉を伝えました。両首脳は、日豪の特別戦略パートナーシップで経済や安全保障の分野でさらに関係を深めることへの強い意志を確認しました。
安全で安定し自由で栄えたインド太平洋地区の実現に向けた両国の協力を強める方法についても話し合い、北朝鮮拉致問題や太平洋島嶼(とうしょ)国への支援などの地域的な問題についても協議を行いました。
また、台風の影響を受けて今月初旬に奄美大島沖で沈没したとみられる貨物船「Gulf Livestock 1」について、モリソン首相は、海上保安庁による乗組員の捜索活動に対する深い感謝を伝え、菅首相はこれに対し、捜索活動はまだ続いており、今後も可能な限り協力を続ける方針を示しました。
菅首相は16日夜に官邸で行われた就任後初めての記者会見で、今後の方針として前の安倍政権の取り組みを継承し、コロナウイルスの感染拡大を抑え、経済の再生に取り組む決意を示しています。

A Filipino crewmember of a Panamanian cargo ship is rescued by Japanese Coast Guard members in the waters off the Amami Oshima Source: The 10th Regional Japan Coast Guard Headquarters
安倍晋三前首相は8月24日、連続在任日数が佐藤栄作元首相を抜いて歴代最長となっていました。しかし、同月28日には記者会見を開き、持病が悪化したことなどを理由に、首相を辞任する意向を明らかにしました。安倍内閣は9月16日に総辞職しています。
安倍前首相は引き続き議員として活動し、菅政権を支えます。今後何らかの外交的な役割を担う可能性があると憶測されています。
菅首相は16日の記者会見で外交について、引き続き米国との関係を強化し、中国とロシアと安定した関係を保つことを目指すとしています。しかし、現在対立が深まっている韓国との関係については言及せず、特に北朝鮮などの脅威に対する安全保障上の戦略についても具体的に触れませんでした。

Prime Minister Yoshihide Suga (front row center) and his new cabinet members. Source: AAP
今後に「課題」
71歳の菅首相は長らく、安倍前首相の右腕・助言役として活躍しており、安倍政権の取り組みを継承し、今後も前に進めていくことが自分の使命であるとの考えを示しています。
発足したばかりの菅内閣も、前内閣の外相と財務相など8人が留任しています。また防衛相には、安倍前首相の実弟である岸信夫議員が就任し、初入閣を果たしました。
女性の閣僚は、橋本聖子オリンピック・パラリンピック担当相と上川陽子法相の2人のみで、前内閣の3人から1人減りました。
与党の自由民主党は議会で安定多数を占めており、日本の議会での菅首相の立場は安定しているといえます。

Yoshihide Suga said he will continue his predecessor Shinzo Abe's policies. Source: AP
しかし、菅首相はこれからいくつもの課題に向き合うことになります。コロナウイルス対策という目の前の問題から、来年に延期された東京オリンピック、そして長期的な問題として深刻さが増している少子化の問題などです。
明治大学で政治を教える西川伸一教授はAFP通信に対し、菅政権が始まる前からの問題が、菅首相の前に立ちはだかっていると指摘します。今後はコロナウイルス対策が最優先事項となるものの、外交面では11月の米大統領選など不透明な要素が多いとしています。
菅首相は外交面で、11月の米大統領選の結果にかかわらず、米国との関係強化を優先するとみられています。また、中国に対しては、コロナウイルス対策や香港でのデモなどに対して国際社会から中国に厳しい目が向けられており、難しい舵取りを迫られることになりそうです。