全国溺死報告書からわかること
オーストラリアに移住する上で「泳ぎ方を学ぶこと」は優先事項ではないように思われますが、ロイヤル・ライフセービング・ソサエティ・オーストラリアが毎年作成している「全国溺死報告書」によると、実際には多文化コミュニティーの溺死数は驚くほど高く、ウォーター・セイフティーに関する知識が乏しいことがわかります。
ライフセービング・ビクトリア(LSV)で、ダイバーシティとインクルージョンのマネージャーを務める、マイケル・マッセーニ氏は、文化的、言語的に多様(CALD・Culturally and Linguistically Diverse)なグループに水泳のプログラムを提供しています。
過去10年間の平均では、溺死者全体の35%がCALDの人々です。つまり、オーストラリアに最近移住してきた人や、両親がオーストラリア国外で生まれた人です
またマッセーニ氏によると、より危険な行動に出る傾向がある男性が溺死者の80%を占めると言います。
男性は、水中での自分の能力を過大評価する傾向がある一方で、女性はスポーツや水泳があまり重要視されていない国の人である傾向があると説明します。

Swimming unlocks opportunities to participate in Australian life Source: Getty Images/Attila Csaszar
なぜ多文化コミュニティーでは溺死のリスクが高いのか?
オーストラリア生まれの子供たちは通常、学校の水泳プログラムに参加できるほか、人口の大半が海岸沿いに住んでいる、またはプールを利用することができるため、水泳はもはやオーストラリアの文化的アインデンティティーの一部と言えます。
しかし、CALDのコミュニティーは必ずしもそうではありません。
エリトリア育ちで、難民としてケニアに移住したソフィアさんは、来豪当時、水泳やウォーター・セイフティーに関する知識を全く持っていませんでした。
来豪前は、人生で2、3回しかプールに行ったことがありませんでした。水泳にとても興味がありましたが、習う機会はありませんでした。
ソフィアさんは、LSV、スペクトラム、そしてビクトリア大学が共同運営するコミュニティ・プログラムの支援を受けて、大人になってから水泳を学び、現在は子供たちに教えています。
「私のようなエリトリア人が移住後、海で命を落としたという話を聞いたことがあります」
「私は浮かび方を知らなかったですし、水中での基本的な技術も持っていませんでした。しかし、水泳を始めてからは、プールで何が起こるかわからないという恐怖を克服することができました」

Rivers can be remote and are unsupervised Source: Source: Mark Kolbe/Getty Images
人はどこで溺れる?
沖合への強い流れである「リップ」が、オーストラリアのビーチで最も危険な要因と認識される一方で、実際多くの溺死は、海岸から離れたところで発生しています。
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昨年発生した溺死事故の26%は川や小川で起きており、ビーチでは22%、海や港では15%でした。
AUSTSWIMのマーケティングマネージャーであるジェイド・ハンソン氏によると、多くは人里離れた遠隔地帯で発生しており、監視や助けがほとんどないため、溺死する可能性も高くなっていると言います。また水深を確認しないことも要因のようです。

Source: Source: AAP Image/Brendon Thorne
泳ぎ方を学ぶのは必要不可欠なライフスキル
水泳をはじめ、釣り、ボート、その他のウォーター・アクティビティを安全に行うには、水泳とウォーター・セイフティー両方のスキルが不可欠です。
自分の泳ぎに自信があれば、自信を持って家族を水辺で監視することができるでしょう
「水泳の技術を身につけることは、地域社会の一員となり、オーストラリアの生活で一般的に行われていることに参加する機会を与えてくれます」とマッセニ氏は言います。
水泳教室を探す
プールは、泳ぎを学ぶのには最適な場所です。AUSTSWIMのウェブサイトでは、AUSTSWIM公認のスイミングセンターの検索が可能であると、ジェイド・ハンソン氏は言います
6ヵ月の赤ちゃんから、大人までのレッスンがあります。CALDの特別レッスンを行っているセンターもあるので、マンツーマン、またはグループでのレッスンになるかもしれません
プールやクラスの規模にもよりますが、1レッスンの平均費用は19~26ドルで、また、無料または助成金を受けられるプログラムもあります。ハンソン氏は地元の移民リソースセンターや議会、大学などに問い合わせることを勧めています。
ロイヤルライフセービングは、CALDグループの成人を含む「リスクの高い」コミュニティーのためのプログラムに資金を提供しています。
大人のために作られたは、シドニーのバンクスタウンにある『Navitas Skilled Futures』が、シドニーで大人向けの水泳教室を運営する『Different Strokes Swimming』と共同開発したプログラムで、現在多くの移民や難民が新たなスキルを持ち、自信が持てるよう支援しています。
泳げるようになるための最初の一歩を踏み出してみませんか?

Australian lifeguards supervise swimmers between the flags Source: Source: Getty Images/Laurie Noble