なかなか見つからない 週400ドル以下の賃貸物件

新たな報告書によると、週400ドル未満で入居者を募集している賃貸物件は19%強と、過去最低を記録しました。

Signage for a real estate property.

Property market data shows the number of rental properties available for under $400 has hit record lows. Source: AAP

Key Points
  • 賃貸価格の高騰により、週400ドル以下で募集をかけている賃貸物件は過去最低水準に
  • 2020年3月、週400ドル以下の賃貸物件は41.8%でしたが、2022年9月には19.3%にまで減少
オーストラリアの住宅価格と政策金利が上昇するなか、手頃な価格の賃貸物件数は過去最低を記録しています。

プロップトラックが発表したマーケットレポートによると、realestate.com.au に掲載されている週 400 ドル未満の賃貸物件は、2022 年 9 月に過去最低の 19.3% を記録。2020年3月と比較すると41.8%減少したことになります。

専門家は、空室率の低下をはじめ、ファーストホーム購入者の減少、移住者の増加により、手頃な価格の賃貸物件は今後数ヵ月間下がり続けると予想しています。

報告書の発表

レポートによると、2022年9月、週400ドル未満の物件が4分の1以上あった首都圏はひとつもありませんでした。

シドニーでは、1年前には5件に1件の賃貸物件が週400ドル以下で提供されていましたが、2022年9月には10件に1件に減少しています。
Infographic showing numbers of rental properties listed for less than $400 per week.
The share of properties listed for rent on realestate.com.au for less than $400 per week fell to a record low 19.3 per cent of listings in September 2022, according to new research by PropTrack. Source: SBS
一方、ホバート、ダーウィン、キャンベラでは、週400ドル以下の賃貸物件は10件に1件以下でした。

また地方でも、週400ドル以下の賃貸に関する広告は57%から28%に減少しています。

COVID-19パンデミック開始以来、賃貸物件の総数は31.4%減少しています。

賃貸価格上昇の原因は?

プロップトラックのエコノミスト、アンガス・モア氏は、空室率の低さと賃貸の選択肢の少なさに起因していると説明します。

「家賃がこれほど急速に上がっている主な理由は、入居できる賃貸物件が少ないからです 」

「空室率は非常に低く、realestate.com.auに掲載されている賃貸物件数は、パンデミック前に比べて大幅に減少しており、首都圏では1年前と比べても減少しています」
ANZ リサーチのシニアエコノミストであるキャサリン・バーチ氏は、需要の増加に加え、建設業界のサプライチェーンの問題もあり、オーストラリアは新築住宅の建設量に制限を受けていると述べています。


「新しい家の建設を待っている人がたくさんいるかもしれません...その家が建設されれば、今すぐ入居して賃貸をやめることができ、他の人のために賃貸物件を空けることができるのです」

利上げの影響は?

10月、オーストラリア準備銀行(RBA)は、政策金利にあたるキャッシュレートを4分の1ポイント引き上げ2.6%とし、2013年7月以来の高水準となりました。

RBAは過去6ヵ月連続で金利を引き上げており、オーストラリアの住宅ローン保有者の多くは、昨年の同時期と比べると、毎月数百ドル多い返済を余儀なくされています。

バーチ氏は住宅価格と金利の上昇により、賃貸市場にはさらに大きな圧力がかかっていると説明します。

「この新たな住宅市場に参入できない人は、今後も借り続けることになるでしょう」

パンデミックの影響

COVID-19のパンデミックは、オーストラリアの不動産市場にも大きな影響を与えました。

モア氏によると、その原因は大きく分けて2つあると言います。

ひとつ目は、パンデミック時に多くの投資家が物件を売却したため、賃貸物件が現在少なくなっていること。さらには賃貸の需要が大幅に増加したことです。
例えば、パンデミックによりシェアハウスの人気が低下し、その需要が減少している一方で、1ベッドルームや2ベッドルームの住戸を求める人が増えました。


またパンデミックの期間中、オーストラリアでは都市部から地方への移住が急増しました。

地方への移住

2020年12月の政府の発表によると、2020年6月の四半期に首都圏から地方へ移動した人口は1万,500人で、過去最大となる四半期の純移動率を記録しました。またこれは、過去10年間に観測された平均値の2倍以上となります。

モア氏はこの国内移動も、空室率の低下と価格の上昇に影響していると説明します。
「首都圏から地方に多くの人が移り住みましたが、地方の賃貸市場には厚みがありません」

「そのため空き物件はすぐに埋まるという減少が過去2年間続いているのです」

この先は?

賃貸住宅に住む人たちが安心できるまでには、まだ時間がかかりそうです。

「コアロジックのデータによると、賃貸物件の伸びは最近鈍化しているようですが、家賃はまだ上昇しており、空室率が低い限り、この傾向は続くと思われます」

「シドニーとメルボルンでは、おそらく空室率は下がり続け、人口増加の回復によってさらに拍車がかけられるでしょう」とバーチ氏は説明します。

「現在多くの移民がオーストラリアに戻り始めていますが、オーストラリアに来る人はみな、住む場所が必要なのです」

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Published 19 October 2022 9:48am
Updated 19 October 2022 10:00am
By Jessica Bahr
Presented by Yumi Oba
Source: SBS


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