オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)の(スキャムウォッチ)によると、文化的・言語的に多様なオーストラリア人(CALD・Culturally and linguistically diverse Australians)は昨年、被害額が2220万ドルに及ぶ詐欺被害を報告していることがわかりました。
これは2019年比で被害額が60%も増加していることを意味します。
ACCCの副議長であるデリア・リカード氏は、オーストラリアにおけるCOVID-19ロックダウンにより、今年はさらに大きな損失が発生すると予測しています。
COVID-19が詐欺に与える影響
COVIDによりオンラインでの取引を余儀なくされ、ストレスが溜まっている消費者をターゲットに、詐欺師らは、あらゆる機会を見計らっています。
スキャムウォッチには昨年、COVID-19に関連した5400件の詐欺報告が寄せられ、その被害額は600万ドルに上りました。
子犬詐欺だけでも、オーストラリアの被害額は200万ドルに上り、また健康・医療関連の詐欺は、パンデミックが始まってから、200%も増加しています。
ビジネスとCOVIDは個人情報への入り口

Online scammers prompt people to click on a link to access their devices. Source: Getty Images/izusek
ビジネスがオンラインに移行するスピードは、「この18ヵ月で一気に加速した」と話すのは、オーストラリア・インターネット・マーケティング・サービス研究所のプロダクト・ディレクター、カイナン・アルバシット氏。
ロックダウンや規制がビジネスのオンライン化に拍車をかけると同時に、取引の際にデータを共有する人が増えています。
「問題はその実行方法です。企業が人々のデータをどのように保管するかは、デジタルの世界に移行する上で最も重要でデリケートな問題です」とアルバシット氏は言います。
「企業は、ウェブサイトの構築、QRコードの作成、オンライン・ショッピング・カートの作成、その安全性や消費者を保護するための対策について、細心の注意を払う必要があります。多くの企業がその重要性を理解せず、またコストカットのため近道をしています」
一般的に詐欺師は、ビジネスデータを利用して顧客のメールアドレスを特定し、リンクをクリックするよう促す偽のオファーを送信します。
このリンクが、彼らのデバイスへの入り口となります。
詐欺師は、一度アクセスすると、オンラインバンキングや身分証明書など、必要な情報をデバイスから抽出することができます。

The ACCC has recorded a huge spike of complaints about an SMS scam called 'Flubot'. Source: Getty Images/RUSSELLTATEdotCOM
対策は簡単です。見に覚えのない送信者からのリンクを決してクリックしないことです。
CALDコミュニティが被害に遭う、3つの詐欺の手口
「オンライン詐欺師が、英語を話さないコミュニティや低所得者層などの弱者を特に狙っていることは非常に明白です」とアルバシット氏は述べています。
ACCCのデリア・リカード氏によると、すべての詐欺には基本的に同じテーマ/ストーリーが使い回されていると言います。
時代の流れに合わせてカバーストーリーを変えているだけなのです
投資詐欺
ACCCの報告によると、CALDコミュニティが最も被害を受けているのは投資詐欺です。
リカード氏によると、CALDコミュニティだけでも、400件の報告を受け、その被害額は150万ドルに上ると話します。
「被害の対象となっている多くの人は、ビルマやスリランカコミュニティ、さらには来豪したばかりの移民です」
多額の投資を行う前には、資格を持ったファイナンシャルアドバイザーに相談することが重要です。
GoogleとAppleは、この種のアプリをストアから削除するよう努めています。
脅威を利用した詐欺の手口
詐欺のほぼ半数は1本の電話で始まります。
内務省やオーストラリア税務局などの政府機関を名乗る詐欺師による個人情報や金銭の要求は、2019年から2020年にかけて約250%増加しています。
詐欺師は、ビザや税金の情報を待っている人をターゲットにする傾向があり、またその緊急性を演じるため、CALDコミュニティは特に、注意する必要があります。
中国当局になりすまし、犯罪を犯したと称して国外退去や逮捕を予告する詐欺も多発しています。

Source: Getty Images/SEAN GLADWELL
「このような詐欺は、オーストラリアの中国語話者をターゲットにしたものが多い」とリカード氏は言います。
出会い系詐欺
ACCCは、CALDコミュニティにおける出会い系・ロマンス系詐欺の被害額を380万ドル以上と報告しており、2019年以降、100%以上の増加を記録しています。
“ロマンス・ベイティング”は、デートアプリを使って投資詐欺に誘い込むもので、オーストラリアでは過小報告されています。またこの手の詐欺は、他の詐欺とは異なり、詐欺対象となる人口の約半数は35歳以下の人に集中しています。
‘Flubot’ –新たな手口
ACCCによると、「Flubot(フルーボット)」と呼ばれるSMS詐欺に関する苦情が急増しています。
この手の詐欺では、アンドロイド端末を標的にSMSが送信されます。SMSは不在着信があったことを知らせるもので、ボイスメールを取得するためのアプリ(Voicemail 7.apk)をダウンロードするためのリンクをクリックするよう促します。ダウンロードされると、Flubotは端末にマルウェアをインストールし、データにアクセスするほか、端末内に保存されていた連絡先へ電話やメールを送信し、さらに伝播されます。
また、もし許可が得られれば、詐欺師は銀行のログイン情報など、個人情報や機密情報にもアクセスすることができます。
しかし、Flubotを避けるのは簡単です。メッセージを削除するだけです。リンクをクリックしたり、電話をかけたりしてはいけません。

Flubot scam operates by sending a text message with a link which installs malware on the receiving device. Source: Shamsher Kainth
詐欺とソーシャル・メディア
サイバー犯罪者は、Facebookやその他のソーシャルメディアでアカウントを作成し、ユーザーと親しくなり、プロフィールをスキャンして個人情報を引き出します。
「プロフィールを公開していると、受け入れる人の範囲が広くなります。知らない人を入れることになります」と話すのは、多くのフォロワーを持つエンターテインメント業界のプロであるティムさん。
ティムさんによると、パンデミックにより物理的な距離を置くことを余儀なくされ、ネット上の交流が増えるなか、Facebook上の偽のプロフィールの数も急増していると言います。
「多くのパフォーマーが私にコンタクトしてきます。一見しただけでは、偽物のプロフィールと本物のプロフィールを見分けることはできません。エンターテインメントの分野では、現実と想像の境界線が曖昧になることが多く、私も間違って(偽のプロフィールを)クリックしてしまったことがあります」。
詐欺に遭わないための簡単なアドバイス
- 詐欺師は誰にでもなりすますことができるので、見覚えのない人からリンクが送られてきた場合は、削除してください。
- メールの送信者のアドレスは必ず確認しましょう。メールのヘッダー(送信者名)には本当のメールが隠されていることがあるので、ヘッダーをダブルクリックして確認してください。
- 公共のWi-Fiを使用する頻度を制限。
- オンラインショッピングでは、オンラインセキュリティ証明書のあるウェブサイトから購入する。URL(アドレスバー)にロックボタンがあるかどうかを確認。
- オンラインビジネスについて調べ、レビューや顧客の体験談を参考にする。
- 銀行口座やスーパーアニュエーションの詳細など、個人情報を電話で伝えない。
- 自分のコンピュータへのリモートアクセスを許可しない。
- よく言われるように、話ができすぎている思われるものは、おそらくそうであると思う。

The ACCC's 'The Little Black Book of Scams' provides information about all the scams. Source: ACCC
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