COVID-19ワクチン補償制度は、オーストラリアの薬品・医薬品行政局(TGA)が承認したCOVID-19ワクチンまたはその投与により、中等度から重度の副反応が起きた場合に受けられる補償制度です。
TGAは、ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社のCOVID-19ワクチンを暫定承認しており、これらワクチンの副反応が疑われる有害事象を監視する責任があります。
2021年9月6日より、TGAが承認したCOVID-19ワクチンによる副反応や健康被害を受けた人は、収入損失や医療費などの補償請求を登録することが可能になりました。
シドニー大学のワクチン専門家、ジュリー・ラスク教授は、このような制度は、「一般市民や医療従事者が信頼の置ける包括的なワクチン接種プログラムには欠かせないもの」であると、歓迎しています。
極めて稀ではありますが、ワクチンによって重篤な反応が出た場合、政府はその人をケアする義務があります
この制度は、TGAが認めた個々のワクチンの公式製品情報に基づいて証明された副反応を補償するものであると、ラスク教授は指摘します。
ワクチンを接種したことと副反応の因果関係が認められなければなりません
副作用として認められているものには、アストラゼネカ社のワクチンに関連した血小板減少症候群を伴う血栓症や、ファイザー社のワクチンに関連した心筋炎や心膜炎などがあると言います。
補償制度への登録
この制度に基づいて請求する意思を登録した人には、サービス・オーストラリアの請求ポータルが稼働し、請求書類を受け付けられるようになった時点で、手続きの時期と方法が通知されます。
保健省は、サービス・オーストラリア請求ポータルの開設に先立ち、必要な証拠書類を含む本制度の最終的な詳細を今年末に発表するとしています。
5,000ドル以上、2万ドル未満の請求は、以下の証明が必要となります

The COVID-19 Vaccine Claims Scheme will compensate those patients who suffer adverse reactions from an approved COVID-19 vaccine or its administration. Source: Getty Images/E+
- TGAが承認したワクチンの投与が行われたこと
- 傷害とワクチンを結びつける医療文書
- 入院の証拠
- 損失の詳細を示す証拠
2万ドル以上の請求については、独立した専門家からなるパネルが審査を行い、その勧告に基づいて補償金が支払われますが、そのために必要となる証拠などの詳細は現在検討中です。
このスキームは、極めて稀な死亡事故も対象となっており、支払額の上限は設けられていません。
ワクチンをすでに接種した人が不利にならないように、この制度は2021年2月22日のワクチン展開開始時から適用され、COVID-19の緊急期間後2年間適用されます。
ラスク教授によると、稀な重篤な有害事象はワクチン接種後数日から数週間以内に発生することが知られているため、この制度の適用期間は十分であると述べています。
副反応は大半、初回接種後に発生すると言われています

The Scheme will be backdated to the commencement of the rollout on 22 February 2021 and will extend to two years beyond the COVID-19 emergency period. Source: Sipa USA Dinendra Haria / SOPA Images/Sip
各業界、制度を歓迎
オーストラリア医師会は、この補償制度は、「ワクチン接種に携わる医療従事者が、オーストラリアのパンデミック対策の一環としてワクチンを投与するという役割を果たすことで、裁判などにかけられないことを確実にするものである」と歓迎を示しています。
また、オーストラリア商工会議所は、ワクチン接種の目標達成を目指す企業は、補償契約などを心配することなく、職場をワクチン接種の拠点にすることで協力できるようになるとも述べています。
ニューサウスウェールズ州の予防接種専門家サービスを担当し、ウェストミード小児病院の予防接種有害事象クリニックをコーディネートする、シドニー大学のニコラス・ウッド上級講師は、この制度はCOVID-19ワクチンプログラムの成功に対する信頼性を高めると同時に、コミュニティが社会に配慮していることを保証するものであり、ワクチン摂取にプラスの影響を与える可能性があると話します。
コミュニティがコミュニティを見守るということを意味します
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!