Key Points
- ジム・チャーマーズ蔵相が、9年ぶりとなる労働党の予算を発表
- 「勝ち組」と「負け組」は? あなたにとって何を意味するのか
ジム・チャーマーズ蔵相が、9年ぶりとなる労働党の予算案を発表しました。
今回の予算案は生活費の高騰、世界が直面するあらゆる状況、異常気象、そして1兆ドルに上る負債などを背景に発表されました。
チャーマーズ蔵相は、今回の予算案は回復力のある経済への投資を目標とし、オーストラリアのより良い未来のため責任ある救済を行いながら、修復を開始すると述べています。
「今回の予算案で鍵を握るのは、『抑制』」と、25日火曜日、予算案演説で述べました。
では、「勝ち組」と「負け組」に分けて、その主な内容、予算があなに意味することを見てみましょう。
「勝ち組」
働く親
労働党は選挙前に、今回の予算案は家族にとってプラスになると発表していたため、保育費用や有給育児休暇に多額の投資が行われるのは当然のことでしょう。
2023年7月からは、年収が8万ドル以下の家庭に対して、保育料補助率が85%から90%に引き上げられ、その後補助率は年収53万まで、徐々に少なくなります。
また、2人目以降も、5歳以下であれば既存の高い補助率が引き続き適用され、最大95%まで引き上げられます。
4年間で5億3160万ドルが投じられ、2026年7月までには有給育児休暇が合計26週間になることを目指します。
2024年7月から2026年7月まで、毎年2週間ずつ有給育児休暇が追加され、最終的には現在よりも6週間長い、有給育児休暇が得られる模様です。
女性
アルバニージー政権は、これまで男女平等の推進を繰り返し約束してきましたが、それは今回の予算にも反映されています。
有給育児休暇や保育費用の見直しは、いずれも女性の経済的平等と男女の賃金格差を改善するものであるとともに、女性の安全に対する取り組みにも17億ドルが投じられる予定です。
これには、家庭内暴力被害者に対して提供される10日間の有給家族・家庭内暴力休暇をはじめ、公営住宅、ならびに手頃な価格の住宅への投資が含まれます。
学生および教育セクター
連邦政府は州・テリトリー政府とともに、1年間の国家技能協定を通じて、TAFEと職業教育の授業料無料化に10億ドルを投じることを発表しました。
2023年には、合計48万人分となる計画の第一段階として、18万人分のTAFEとコミュニティーベースの職業教育が無償で提供されます。
無償で提供されるもののうち、少なくとも1万5000人分は、高齢者介護に関連しており、このセクターにおける負担の軽減を目指します。
この予算案はまた、「より良い学校、幸せで健康な生徒、より有能な教師」のために 7 億 7,000 万ドル以上が投資されるほか、不利な立場にいる学生を対象に、今後2年間で最大 2 万人分の新しい大学入学資格を創出するため、4 億 8,500 万ドルが投資されます。
環境
また今年の予算案では、気候変動と環境が大きく取り上げられています。
環境と遺産の保護に18億ドルが計上さるほか、グレートバリアリーフの防衛と修復を加速するために追加で2億400万ドルが投じられます。
また、在来種の保護、都市部の水路の改善、研究センターの設立、海洋・海洋公園の管理改善、気候変動に関する先住民の関与などの取り組みも支援されています。

Childcare, environmental protection, women's safety, closing the gap initiatives and fee-free TAFE will all receive a funding injection. Source: SBS
8億以上が投じられ、最大10万家庭に対して、ソーラー蓄電池の提供、電気自動車への減税、全国電気自動車充電ネットワークの構築、高速道路での水素充填ステーションなどにあてられます。
先住民と議会への声
これには、憲法に議会へ発言権、いわゆる「Voice to Parliament」を明記するための国民投票準備のため、オーストラリア選挙管理委員会への5020万ドルも含まれます。
また、500人のファースト・ネーションズ保健ワーカーと開業医のトレーニングに5430万ドル、ファースト・ネーションズの人々に対応するための保健インフラプロジェクトに1億6430万ドルが割り当てられています。
この予算では、ファースト・ネーションズ司法への投資額も過去最高の9,900万ドルに達しています。
国防
国防のための資金は2022-23年に8%増加し、今後4年間でGDPの2%超に上昇する見込みです。
政府はまた、東南アジアへの特使の任命と、東南アジア全域での政府の取り組みを調整するための東南アジア事務所の設立に1300万ドルを投じます。
さらに3,100万ドルを投じて、オーストラリア公共サービスのサイバーハブパイロットを拡張し、サイバーレジリエンスとセキュリティの向上を支援します。
年金受給者
働きたい年金受給者は、年金が減額される前に、従来の7,800ドルではなく、1万1,800ドルまで収入を得ることが可能になります。
また、高齢のオーストラリア人は、自宅を縮小することが奨励されます。
政府は、年金資産審査を変更し、住宅売却益が12ヶ月間ではなく、最大24ヶ月間免除されるようにします。
55 歳から 59 歳のダウンサイザー・スーパニュエーション拠出へのアクセスも拡大される予定です。

Treasurer Jim Chalmers has handed down the 2022-2023 Federal Budget. Source: AAP / Lukas Coch
エイジドケア
政府は、2023 年 7 月 1 日から高齢者介護の現場で正看護師を 24 時間 365 日確保するため、25 億ドルを投じます。2024年10月1日からは、平均介護時間が入居者1人当たり1日215分に増加する予定です。
政府はまた、高齢者介護事業者がCOVID-19の発生を管理できるよう8億1020万ドルを拠出し、2022年12月31日まで住宅型高齢者介護施設のインリーチテストを継続するために3490万ドルを投じることを決定しています。
オーストラリアへの渡航を希望する人
また、太平洋島嶼国および東ティモールの国民を対象とした新しいパシフィック・エンゲイジメント・ビザが来年から導入され、パーマネント・プログラムの一環として19万5000人に加え、最大3000人の枠が用意されます。
海外にいる家族との再会を希望する人にもメリットがあります。
パートナービザや子どもビザは、制限を設けず、需要に応じて推進され、親ビザについても、2021/22年に4,500件だったものを、今年は8,500件に増やし、より多くの人がビザを取得できるようになります。
「負け組」
家計
保育料の引き下げや有給休暇の増加、薬価の引き下げなど、今回の予算案は生活費の高騰を緩和するための措置がいくつか講じられていますが、オーストラリアの平均的な家庭では、当面の間、日々の生活が楽になることはほとんどないでしょう。
住宅、食品、燃料などの現在のコストは依然として高く、インフレ率は今年後半に7.75%のピークに達すると予想されています。
高いインフレ率に加え、世界情勢や高金利の影響で、実質賃金が再び上昇に転じるのは2024年以降になると予想されています。
「賃金は選挙前より早く伸びています。しかし、電気代や食料品価格の上昇により、それを感じることができません」とチャーマーズ蔵相は言います。
駐車上を含む、その他の保守連合プロジェクト
投資と支出を支えるために、アルバニージー政権は220億ドルの支出削減と再分配を実施します。
この中には、「Regional Accelerator Program」からの17億ドルの再分配や「Energy Security and Regional Development Plan」の一部取り崩しによる14億ドルなど、多くの保守連合プロジェクトが含まれています。
また、ケイティ・ギャラガー財務相の事務所によると、駅の近くの駐車場を建設するための都市混雑基金から6億7100万ドル、「より良い地域づくり」のための「裏金」から2億5200万ドルが削減される予定です。
多国籍大企業
2023年7月1日から、多国籍企業に対する取り締まりが行われ、特定の税務情報の公開が強制されます。
また、低税率または無税の国・地域と関係がある場合、特定の税額控除を申請することができなくなります。
競争法および消費者法の違反に対する罰則は、違反1件につき1,000万ドルから5,000万ドルに、または違反が行われた期間の年間売上高の10%から30%(いずれか高い方)に引き上げられます。
税金逃れ
税務実務者委員会に 3,000 万ドルの資金が提供され、不適切で違法な税務アドバイスを行っている税務実務者が標的にされ、税務コンプライアンス向上のための調査に当てられます。
また、オーストラリア税務局(ATO)は、控除額の過大申告を取り締まるプログラムを継続するために 8000 万ドルを獲得する予定です。
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