AMEP(エーエムイーピー、Adult Migrant English Program)と呼ばれるオーストラリアの移民向け英語学習プログラム。現在対象となる移民は、 510時間の英語の授業を無料で受けることができます。
しかし、連邦政府のアラン・タッジ移民相代理によると、プログラムの履修者は平均して510時間のうち300時間しかクラスを受けず、また履修者の21%が、「実用英語(社会に参加するための基本レベル)」を身に付けないまま授業に来なくなってしまうといいます。
この問題に取り組み、実用レベルの英語を移民に習得してもらうため、AMEPがより多くの移民にとってアクセスしやすくなるよう拡大されます。
タッジ移民相代理は28日にナショナル・プレスクラブで講演し、AMEPの変更点について説明します。この変更点には、無料で受講できるクラスの時間数の上限撤廃や、5年以内としているコースの修了期限の撤廃などが盛り込まれます。
タッジ移民相代理は講演用原稿で、「この機会を十分に生かして欲しいと思います」と述べています。
タッジ移民相代理が示す試算によると、現在オーストラリアで100万人近い人が英語のスキルが一部十分ではなく、それにより就職やオーストラリアでの生活に慣れるという点で「大きな不利益」を被っている移民がいるとみられています。

Mr Tudge says making English language capability e more widespread would help the nation's social cohesion. Source: AAP
「これは英語のスキルが十分でない人を責めるものではありません。しかし言葉の壁があると、(オーストラリアの)コミュニティーに完全に参加することが難しいのは明らかです」とタッジ移民相代理は語ります。
「英語のスキルがなければ、(オーストラリアで)職を見つけ、生活にとけこみ、私たちの民主主義に参加できる可能性が低くなります」。
国勢調査(センサス)のデータによると、オーストラリアで英語を全く話せない、または十分に話すことができないと答えた人の数は、2016年には約82万人と、10年前の2006年の56万人から増加しています。
オーストラリアの価値観重視へ
AMEPの変更は、オーストラリアがコロナウイルスのパンデミックから浮上していくなかで、オーストラリアで社会的な結束を強めることを目的とした数多くの取り組みの一つだと、タッジ移民相代理は説明します。
連邦政府はさらに、オーストラリア市民権の取得を「特に重要視」する考えで、市民権のテストで問う「オーストラリアの価値観(Australian values)」について質問を新しくするなど、内容をアップデートするとしています。
「オーストラリアの市民権(を得ること)は特権であり、責任でもあります。オーストラリアの価値観を支持し、オーストラリアの法律を尊重し、オーストラリアの未来に貢献したいと考えている人に与えられるべきものです」とタッジ移民相代理は語ります。
2019ー20年度にオーストラリア市民権を取得した人は20万人を超え、過去最高となっています。
連邦政府はまた、社会的な結束(social cohesion)に対して移民コミュニティーが抱く感情や心理をより深く理解するための調査プログラムを立ち上げるほか、二カ国語を話すコミュニティー・リエゾン・オフィサーを増員するなど、コミュニティー・リエゾン・オフィサーのネットワークを拡充する計画です。さらに、「オーストラリアのナショナルアイデンティティーを明確にするための広範なキャンペーン」の策定も行うとしています。
「これらのイニシアチブにより、私たちの価値観がより堅固になり、共通言語が強化され、わたしたちの団結を強めます」とタッジ移民相代理は語ります。