スコット・モリソン豪首相が菅義偉首相と会談するにあたり、家族と引き離されたまま日本に取り残されたオーストラリア人に注目が集まっています。
モリソン首相は菅内閣発足後、初の外国首脳として11日火曜日の午前中に東京に到着しました。
しかし、オーストラリアの帰国者に対するホテル隔離の制約によって、帰国に苦労している人たちからは、モリソン首相の訪日のタイミングが疑問視されています。
メルボルンのナディア・キャンベルさんは、今年初めに末期の母との別れのためにオーストラリアに帰国して以来、日本にいる夫のねもと ゆうすけさんと、6歳の息子ラース君との再会を待ち望んでいます。
「常に宙ぶらりんな状態で、疲れます。まったくの悪夢です」とSBSニュースにキャンベルさんは述べました。
「奇跡が起きて無事メルボルンに戻るれることを願っています」

Nadia Campbell said the family is uncertain when they will be reunited. Source: Supplied
キャンベルさんが出国する以前、夫妻は日本で英語学校をともに運営されていました。
キャンベルさんによると、夫と息子は今月初めに予定されていたオーストラリアへのフライトをキャンセルされており、長らく続く別居の不安が家族に影響を与えていると述べています。
「スコット・モリソンが私の家族の近くまで行けるのに、連れ帰らないなんてショックです」
「彼は巨大なジャンボジェットか何かに乗れば、日本で足止めされているオーストラリア人全員を連れて帰ることができます。誰が私たちを助けようとしているのかわかりません」
現在3万5000人以上のオーストラリア人がオーストラリアへの帰国を希望しており、スコット・モリソン首相はクリスマスまでに帰国させたいと表明しています。
しかし、キャンベルさんの夫でパートナービザを持つねもとさんは、再会の希望を持ち続けることが難しくなってきている、特に息子のラース君をこれ以上待たせるのは難しくなっていると話しています。
「息子はママに会いたいと心から願っていて、COVIDとフライトの状況について理解しようとしていますが、それは時折厳しくなっています」
「彼らはクリスマスまでに、海外で足止めされているオーストラリア人全員を連れ帰ると言ってはいますが、そのようには見えません」とねもとさんは言います。
スコット・モリソン首相、訪日の理由?
モリソン首相は渡航に先立ち、海外へ行くことに驚くオーストラリア人もいることを考慮し、なぜ日本への訪問が重要なのかという質問にこう答えています。
「私は、このパンデミックの期間中にオーストラリアを離れた何万人ものオーストラリア人のうちの一人になります。これは決して珍しいことではありません」
「海外渡航を余儀なくされた何万人ものオーストラリア人がいます」
モリソン首相は、初の外国首脳として菅首相と面会することに意義があると述べています。
「日本はオーストラリアと非常に特別な関係にあります。経済的な関係だけでなく、貿易的、文化的、社会的、そして重要なのは、戦略的な関係です」
会談は、防衛協定の調印を含む地域の安全保障に焦点を当てることが期待されています。この戦略的パートナーシップは6年前から交渉されており、お互いの国の軍隊が訓練や作戦のための訪問を可能にするものです。
日豪両首脳の話し合いは、オーストラリアと中国の緊張した関係を背景に行われます。
オーストラリア国立大学日豪研究センターのアームストロング理事は、今回の日豪訪問は象徴的にも重要であり、時宜を得た訪問であると述べています。
「オーストラリアと日本は、地域の成果を形取る中堅国連合をリードしています」
「オーストラリアと日本のような中堅国の積極的な行動がここで必要です」と述べました。
「信じられません」
しかし、6月以来、日本からパースに戻ることができない西オーストラリア州のリー・ディアールさんは、モリソン首相の外遊のタイミングに疑問を呈しています。
「(訪日について)読んだとき、私はショックでした。彼は飛行機であちこちを飛びまわることを許されるのでしょうか? 本当にその必要があるのでしょうか?」
世界一周旅行の一環としてパリから日本へドライブしたディアールさんは、予期せぬパンデミックにより旅行の中断を余儀なくされました。

Leigh Dearle and his wife Stephanie in Japan. Source: Supplied
妻のステファニーさんとオーストラリアへの帰国を試みましたが、一連のフライトキャンセルにより、入国を拒否されています。
ディアールさんは、自分がオーストラリア人であることを誇り高く思っているものの、政府が国民の帰国を支援するために十分なことをしていないと考えていると述べています。
「オーストラリア政府の自国民への接し方に失望し、嫌悪感さえ覚えました」
「私たちは今のところ、航空券を買う余裕がないので、オーストラリアへの渡航をあきらめています」と語りました。
退職したインターナショナル教師のケイトさんとニック・ホリウェルさんも、6月に日本での仕事を終えて以来、帰国することができません。
ホリウェル夫妻もフライトのキャンセルを耐え忍んでおり、帰りのフライトの費用は8,700ドルにも達するといいます。

Kate and Nick Holywell have been trying to return to Australia. Source: Supplied
「一般の人が戻ることは不可能です」とホリウェルさんは語ります。
「なぜわざわざ日本まで来る必要があるのか、私には理解できません」と、ホリウェルさんはなぜモリソン首相が菅首相とビデオ会議で 会合できなかったのかと疑問を呈ています。
「人権を侵害している」
オーストラリアの州と準州では、ホテルの検疫能力が限られているため、帰国する旅行者の数も限られており、帰国のチャンスを待つ行列ができています。
連邦政府は、これはCOVID-19の感染拡大を抑制する上で重要な役割を果たしているとしています。
現在からクリスマスまでの間に、ホテルの検疫所の上限が徐々に緩和され、さらに2万7,000人のオーストラリア人が帰国することが予想されています。
また政府は最近、ダーウィンにハワード・スプリングス検疫施設を開設し、帰国旅行者の検疫体制の拡大を支援しています。
しかし、アムネスティ・インターナショナルの活動家ジョエル・マッケイ氏は、オーストラリア人の帰還は「遅すぎる」ままであると警告し、政府に対し、検疫場所への投資を増やし、自宅での検疫手配を拡大することを検討するよう求めています。
「この検疫プログラムでは、人々の帰還が十分だとは言えません」
「オーストラリア政府は、海外に取り残されたオーストラリア人の人権を確実に侵害しています」