アストラゼネカワクチン、すべてのオーストラリア人が接種可能に GPを通じて

オーストラリア各地で発生しているコロナウイルスの感染拡大を受け、政府が昨夜発表しました。

COVID-19 cases across the country

Source: AAP

感染力が強いデルタ株が国内で拡散し、ワクチン接種を増やすべきだという声が再燃したことを受け、ナショナル・キャビネットは28日夜、高齢者施設の従事者にCOVID-19ワクチンの接種を義務付けることを決定しました。またオーストラリアの成人がGPを通じて、アストラゼネカワクチンを接種できるよう、GPに対する新たな補償制度も発表されました。

スコット・モリソン豪州首相は、28日夜、ナショナル・キャビネットが高齢者施設で働く従事者に対してワクチン接種を義務化することを承認したと発表。本来ではあればワクチンプログラムのフェーズ1で終了する予定であった、オーストラリアで最も弱い立場にいる人のワクチン接種の完了を目指します。

「これはどの政府も、簡単に行うべきことではありません…私たちは、可能な限り最善の医学的アドバイスに基づいて、この問題をしばらく検討してきました」モリソン首相は述べました。

COVID-19によって命を落とした910人のうち、685人が高齢者施設の入居者でした。

モリソン首相は、各州やテリトリーの保健命令と、連邦政府の対策を組み合わせ、9月中旬までに高齢者施設でのワクチン接種を完了することが、義務化計画の目的であると述べています。

1100万ドルの支援パッケージ

連邦政府は、高齢者介護従事者の離職などの予期せぬ事態が起こらないよう、高齢者介護施設が職員にワクチン接種のための有給休暇を与えることができるよう、1100万ドルの支援を行うことを発表しました。

ザ・エイジド・アンド・コミュニティ・サービス・オーストラリア(ACSA)は、1100万ドルの支援を含む今回の発表を歓迎したものの、重要な問題は、容易に供給を受けられるようにすることだと指摘。

ACSAのパトリシア・スパロウCEOは、「ワクチン接種率が低い理由は、私たち労働者とはあまり関係がありません」と述べ、「予防接種率を向上させる最善の方法は、職場での予防接種を含め、高齢者介護従事者ができるだけ簡単に予防接種を受けられるようにすること」だとしています。
「私たちは、年初にワクチン接種の優先順位、フェーズ1Aと1Bを与えられましたが、未だにワクチンを待っている状況です。(ワクチンを接種していないのは)私たちのせいではありません」

「私たちは連邦政府が訴える緊急性を感じることができませんし、政府からの計画的で明確なコミュニケーションも見られません。これは早急に是正されなければなりません」

高齢者施設でパーソナル・ケアラーとして勤務するネパール出身のサヌ・ギメレさんは、高齢者施設の従事者はワクチンを希望しているものの、予約の適切な時間を見つけるのが難しく、またワクチンを受ける間の経済的支援も得られないとSBS ニュースに語りました。

「私たちは優先扱いされていません。私の同僚らは、(高齢者施設に)残っていたワクチンを接種しています」

「友人の中には予約を取るのに苦労していたり、ワクチンの副反応を恐れています」

「私は2回目の接種後、6日間体調を崩しました。同僚の中には病気になっている余裕がない人もいます」

検疫所職員のワクチン接種も義務化へ

ナショナル・キャビネットでは、高齢者施設の従事者に対するワクチンの義務化に加え、海外からの旅行者・帰国者に対して、14日間の検疫を終えた後に、さらに2日目、3日目に検査を受けることを義務化することが決定されました。これによりある州やテリトリーで14日間の検疫を受けた旅行者は、さらに14日間の検疫を受けることなく、他の州やテリトリーへの移動が可能となります。

また検疫所への移動に携わる人を含め、すべての検疫所職員にワクチン接種と検査が義務付けられます。

さらには、感染リスクの低い国内旅行者とリスクの高い海外からの旅行者の部屋を隣り合わせにすることなども禁止されます。クイーンズランド州では、これが感染拡大の原因ともなりました。

60歳未満 アストラゼネカワクチンの接種可能に

また、より広範なワクチン接種を促すために、連邦政府はCOVID-19ワクチンを投与するGPに、無過失補償制度を提供し、60歳未満の人にもアストラゼネカワクチンを接種できるようにします。

モリソン首相は、ワクチンプログラムの変更と供給の改善により、オーストラリアが「今年中にプログラムの遅れに追いつく」ことを期待しています。

また、"フライイン・フライアウト(FIFO)"(遠隔地の職場への通勤に飛行機を利用)の労働者がウイルスを拡散する可能性があるという問題にどのように対処するのか、航空輸送や資源会社などとの協議が行われる予定です。

ファイザーワクチン供給の制限

COVID-19 タスク・フォースのジョン・フレウェン司令官は、ファイザーワクチンの供給は依然として不足している一方で、アストラゼネカ社からは60歳以上の人に十分な量のワクチンが供給されていると、記者団に語りました。

フレウェン司令官は、近い将来にこのCOVID-19が根絶されることはないだろうと警告しています。

「私たちは今後もCOVID-19のアウトブレイクが継続的に起こるということに慣れる必要があります」

「しかし、コロナウイルス対策により、命を守り、重症化を防ぎ、できるだけ早く通常の生活に戻れることを期待しています」

「ワクチン接種はそのすべてを支えるものです」

ニューサウスウェールズ州では29日、19人の新規感染者を確認。うち17人の感染源は特定されています。
クイーンズランド州では、新たに2件の陽性者を確認。160人以上の鉱山労働者が検査対象となり、タウンズビル、パーム・アイランド、マグネティック・アイランドの州南東部における3日間のロックダウンが29日18時から発表されました。

南オーストラリア州では、新規感染者は確認されていませんが、感染リスクの高い環境ではマスクを着用し、パブ、カフェ、レストランでは人数を減らすなど、規制を強化しています。

西オーストラリア州では、シドニーを訪れた人から拡大した市中感染を受け、パースのピール地区では29日午前12:01から7月3日午前12:01まで、4日間のロックダウンに入りました。

ノーザンテリトリーでは、オーストラリア中央部の鉱山に関連して発生した集団感染が7件に拡大。少なくとも7月2日まで厳重な警戒態勢が延長されています。

オーストラリアでは現在約740万人がワクチン接種を受けています。

火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!

から過去のストーリーを聴くこともできます。

SBS 日本語放送のもお忘れなく。


Share
Published 29 June 2021 12:00pm
Updated 29 June 2021 12:05pm
Presented by Yumi Oba
Source: AAP, SBS


Share this with family and friends