オーストラリアの人種差別コミッショナー、チン・タン氏が、人種差別に対する国家戦略を策定。連邦政府に対してこの新たな枠組みを支持し、実施するよう求めています。
タン氏は17日、コンセプトペーパーを発表し、「オーストラリア、そして世界中で人種差別が再燃していることに深く悩まされる」と述べました。
また、来週21日の国際人種差別撤廃デー(オーストラリアではハーモニーデーとも呼ばれる)に先駆けて、タン氏は、この新たな枠組みの必要性が「この1年で痛切に明らかになった」とも述べました。
同氏は、したことや、ASIOとAFPがホームグロウン・テロリズムと過激主義をオーストラリアの国家安全保障に対する重大な脅威とみなしていることなどを指摘しました。
「ドメスティック・バイオレンスや児童虐待の問題と同じように、人種差別の問題にも目を向けるべき時が来ています」とタン氏は言います。「これらの問題については、オーストラリアのすべての政府が署名した長期的な国家フレームワークがあり、優先課題を対象とした3年間の行動計画があり、その解決に向けて真剣に取り組んでいます」。
連邦政府が資金提供を行っていた反レイシズムキャンペーン、「It Stops With Me」は2015年に終了。それ以降、反レイシズム戦略は、オーストラリア人権委員会(AHRC)の予算で賄われてきました。
労働党並びに、オーストラリアのエスニック・コミュニティズ・カウンシルは、かねてより新たな反レイシズム戦略を提唱してきました。
タン氏がSBSニュースに語ったところによると、AHRCは新戦略について連邦政府と予備的な話し合いを行っており、連邦政府に新戦略の支援と資金援助を求めています。
「このような枠組みを持つことは国益にかかわることなので、連邦政府は協力してくれると信じています」
「人種差別は、経済的、社会的、そして国家安全保障上の重大な脅威であり、今こそ、そのように扱うべき時なのです」。
スコット・モリソン首相は17日、チン・タン氏が提案した枠組みを「歓迎する」と声明で発表し、内務省にも協力を求めたと述べました。
この新たな枠組みでは、今後数ヵ月の間にコミュニティセクターや政府との間で広範な協議が行われ、オーストラリアにおける人種差別の性質や、その発生率を完全に把握するためのデータ収集の一元化など、重要な問題に取り組むことになっています。また、現行の法的枠組みを見直し、人々をより効果的に人種差別から保護することも含まれています。
「現在、人種問題を扱う中心的な場所はありません。一般人の多くは、人種差別について、どこへクレーム・相談するべきか知りません」
「私の願いは、実際に電話をかけた人々が、適切な場所へと誘導され、サポートを受けられるようなシステムです」
人種差別の標的
もともとは勉強のため、中国から来豪したヴィンセント・チェンさんは、その後、自分のコーヒーショップを開くという長年の夢を2年前に実現しました。チェンさんが住むキャンベラのコミュニティは、いつもとてもフレンドリーだったと言いますが、今月、彼は人種差別的な攻撃の標的となり、「ショック」を受けたと話します。
「友人の間では人種差別を受けたという話は聞いたことがありましたが、まさか自分に起きるとは思ってもいませんでした」

Vincent Chen was targeted in a racist attack. Source: Supplied
「このような中傷を受けると、この国に歓迎されていないと感じずにはいられません」
チェンさんによると、事件の発端はカフェの外でタバコを吸う若者たちに注意をしたことでした。若者らはその場を一度去ったものの、その後戻り、人種差別的な発言をスタッフに繰り返しました。10代の少年がスタッフを「ウイルス」と呼んだり、店の前で唾を吐く様子はスタッフによりビデオに収められました。
チェンさんは、事件をACTの警察に報告したものの、それ以上の対応は求めませんでした。
少年はその後チェンさんに謝罪し、チェンさんも謝罪を受け入れています。
「私はこの事件だけに焦点を当てたいわけではありません。このビデオを投稿した理由は、このようなことがまだ起きているということを人々に知ってもらうためです」とチェンさんは述べています。
「私は政府や当局がこの件について何かするであろうと信じています。オーストラリアは多様で多文化な国ですから、動く必要があると思います」
チェンさんは、新たな反レイシズムの国家戦略のローンチを歓迎しており、オーストラリアをより安全で包括的な国にするための第一歩であることを期待すると述べています。
「このような事件が二度と起こらないことが理想的な結果です」
AHRCは10月、連邦政府が戦略を支持していると発表しており、連邦検事総長のクリス・モライティス長官も当時、この枠組みを「全面的に支持する」と表明していました。
「私たちは同じ道を歩み、同じ波長を持っています。我々はこれをさらに推し進めたいと思っています」と、上院議会でも述べました。
「我々は、社会的結束の問題が非常に重要であることを確かに認識しています」
当時、この対応を支援するための追加資金は割り当てられませんでした。
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